愛は惜しみなく与う
短編




「ボス、そろそろ離して頂けませんか?」


後ろから私の腰に手を回して離さないXANXUSさまに一声掛けたものの、そんな言葉を逐一聞くようなボスではないことを思い出し、私は押し黙る結果になった。


「俺が簡単にお前を離すと思ってんのか?」


そう耳元で低く囁くXANXUSさまはどうやら機嫌が悪いらしい
今日、私は何か仕出かしてしまったのだろうか
朝はいつも通りだったし、それ以降の時間なら私はXANXUSさまと話す機会などなかったのだから私は何もしていない
けれどそんな常識は彼には通用しないことはここ数年で悟った私だ
きっと何かをきっかけにして私が彼の機嫌を損ねてしまったのだろう


「XANXUSさま?私は何かXANXUSさまの機嫌を損ねるようなことをしたでしょうか?」


正直に私は彼に尋ねると、彼はフッと自嘲的な笑みを浮かべる

これは相当怒っていらっしゃる


バンッと私の目の前の机に向けて何かを叩き付けるXANXUSさまに私は尋ねる


「これは?」

「お前に見合いの話が来てたそうじゃねぇか」


そういえば、確かにそうだった
相手はボンゴレなんかとは肩を並べることなど到底できない中小マフィアのボス
きっと彼は地位が目的で私に近づいたのだろうけど、私はそんな中小マフィアのボスごときに嫁ぐ気はない
どうせなら、ボスの…XANXUSさまの役に立てるようなマフィアの人間に嫁ぎたいものだと考えていた。
大きなマフィア組織。それもボンゴレとの橋渡しになれるような存在のものの所へと…


「俺の居ない間に他の奴のところになんか行こうとすんじゃねぇ
お前は誰のものか良く考えろ。俺のものだ。
お前は永遠と俺から離れられないはずだ。分かってんだろうな。
離れるな、目を逸らすな、真っ直ぐに俺を見て、俺以外のところへは行くな

分かったか?お前は死ぬまで俺のもんだ」


怒鳴り散らすように、けれど少しその様子が焦ってるようにもみえて、
私の胸は痛むばかりで、無性に苦しくなる

そして、グイっと腕を強く引かれ、私はXANXUSさまに抱きしめられる形となった

XANXUSさまは今、何を考えているのだろうか?
自分の所有物を他のものに穢されるのをもっとも嫌う貴方さま
私は何処にも行きやしないのに…
私の全ては貴方さまにあります。
それこそ貴方さまが死ねといえば死ねるほどに…


「…私は貴方様の、XANXUSさまのものです。
私はXANXUSさまの役に立つようなものの所にしか嫁ぎませんよ?」


「却下だ。お前はこの先誰にも嫁がせない」


「で、ですが…「それでも誰かに嫁ぎたいなら俺の元に来い」


「お前だけを愛することを誓ってやる。お前が居れば元から何もいらねぇんだ、お前が傍に居ればいい。だからこそお前も誓え。俺以外に目を向けるな、俺以外に気を移すな。俺のことだけを考えて、俺の為に生きろ」


「……それは命令でしょうか?」


「否、決定事項だ。異論は聴かねぇ」



身勝手で我が儘、そして何より俺様な私のボス
知っているでしょう?
私はもう貴方さま以外のものなど、どうでもよくなってしまったのだと。

禁断の果実が甘いのだと教えてくれたのは貴方さまでした。
私に光と生きる道を与えてくれたのも貴方さまでした。

貴方さまの進む道に、
私と共に歩むという選択肢が生まれたのなら、私は喜んで参りましょう

私はもう、貴方さましか見えないのだから



【独占欲×依存症】



(Ti amo)
(XANXUSさま、愛してます)


唇の上ならば 愛情のキス


そんな言葉もあったと思い返しながら、
私はXANXUSさまから与えられる接吻に身を委ねた



――――――――――――
初めてのXANXUSさんでした。
独占欲が強くて、ヒロインを本気で愛しつつ、それを素直に言葉にできないXANXUSさんを目指し…
というような感じにしたかったのですが、うまくいきませんでした。
とにかく私のXANXUSさん像はこんな感じ

いつかまた、リベンジしたい






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