愛は惜しみなく与う
短編





「痛っつ…」

「大丈夫ですか?」

「うん、ごめんね。毎回毎回」


申し訳なさそうに謝る彼のこういった顔を、
もう何回見たことだろう
多分もう数え切れないほどの数になる

真選組の専属の医者になってもう、半年
半年と言っても毎日毎日こんな怪我の治療をしていれば大層な時間にもなる
はぁーと溜息をつきたい気分にもなるけれど、
それによって悲しむ人が居ることを知っているから決して吐かない

たとえば、彼の背中に残る生々しい刀の傷跡とか、
体のあちこちにできる擦り傷や痣…

特に彼は普段はミントンなんかやっていて、
何も怪我をしてないようにも見えるけど、
でも彼も真選組隊士

そして監察方

敵地に潜り込むときには失敗すればものすごい数の傷を負ってくる

土方さんだって、あの沖田さんだって傷を作ってくる
だからその下についている彼らだって傷を作るのは自然なことだ

でも、こんな量の傷を見るのがこんなにも心が痛いだなんて知らなかった
彼らは私達の為にこんなにも傷を作って、傷付いて
それでも戦っているんだ

彼の背中の傷に触れると、
彼の瞳が大きく開かれた


「傷、痛いですか?山崎さん…」

「否、もうなれました」


あははと笑う彼
この傷の痛みにさえなれてしまっている
そんな事実に胸を痛めた


「…千鶴さん、もう慣れました。だからそんな顔しないでください」


そういって山崎さんの空いている両方の手で私の頬を包み込んだ


「俺にはこんな痛みへっちゃらです。ただ、愛しい人がこんな顔をしていることの方がもっと痛い。
俺たちは町の人の為とはいいますが、所詮自分の為です。
自分の為に貴女を護りたい。それじゃ駄目ですか?」


その言葉を聞いた途端、抑えてた涙が溢れ出た。

その涙を彼は少しずつ指で拭いながら、私は彼の胸へとすっぽり抱え込まれた


「私は貴方を好いています」

「知ってますよ。だから俺は戦ってます。
俺には傷付いても、待ってくれている貴女が居るから戦えます。
だから、泣かないで、心を痛めないで…俺はちゃんと帰ってきますから」


「……っはい…」




ねぇ、山崎さん
今度春が着たらきっと、花見をしましょう
隊士の皆さんが誰一人欠けないように、

きっと、皆で




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前サイトから。
山崎さんかっこよくないですか?
凄い好きです
あの馬鹿っぷりも凄い好きです
というわけで書いてみた山崎さん
山崎さん連載書いてみたいかもしれません







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