愛は惜しみなく与う
短編





私にもう少し時間があったのなら、
私は何をするだろう


沢山、たくさん、

あの方との想い出を作って

あの方の大好きな団子を一緒に食べて

その後に2人で一緒にお祭りにでも出かけたい


そんな夢を見るのは私の命がもう少ししかないから…


不治の病とはよく言ったものだ


私は貴方に何ができたでしょうか?
私は貴方に何ができるでしょうか?
私は貴方を幸せにすることができたでしょうか?


この限られた命の中、私は貴方のため、

私が心よりお慕いする幸村さまのために生きたいと思った


「千鶴…」

「…幸村さま」


私は1人、何をするのでもなく縁側に腰を掛けて居たのだが、
突然の私の名を呼ぶ声にビクリと体を震わせ後ろを振り返るとそこには幸村さまが立っておられた
私はなんでここに幸村さまが居られるのか不思議でたまらなかったが、でも自分の気持ちには嘘を吐けず
私は好いている人のお側に少しでも居たいと思い、
幸村さまに近づいた


「こんな時間にこんなところに居れば体に障る」


幸村さまそういうと私に羽織を被せて優しく抱擁してくださった

幸村さまは本当にお優しい方だ

でも私はたくさんたくさん
幸村さまに優しさを貰っているのに、
何も返すことができてないではないか、


自分が、病が、憎らしい


私の時間は少しずつ減ってきていることが自分でも分かる
幸村さまは私を気遣って、病気のことはお話にならないけれど、他の誰でもない自分の体

ガタがきてるのは自分が一番よく分かる


ごめんなさい

ごめんなさい

幸村さま


旦那さまを置いて死に逝く私を赦してください


幸村さまには跡継ぎさえ作ってさしあげれなかった…

この溢れんばかりの愛しいと云う気持ちも伝えきれない…


こんなに、
こんなにも愛が溢れ出るのに私は直に死に逝くのだ


「幸村さま、私は大丈夫です。何か私にできることはありますか?ただ…ただ、幸村さまに何かしてさしあげたいのです」

「千鶴、某は何かをしてもらいたいのではござらん。ただ貴女に隣に居てほしいのだけ」


幸村さまは私の手を優しく握ると
私の体を幸村さまの大きな体で包み込む

そして私はそれに伴って幸村さまのお背中に腕を回す
彼はそれに気づいたのか、幸村さまも私の背中にしっかりと腕を回し始めた

この人の体温は温かい
心地のよい温かさで、なぜだか涙が零れ落ちそうになった

嗚呼、

この人が愛しい


この体温を何時までも感じて居たい

ずっと隣で笑っていたい

いつまでも戦から帰ってくるのを待っていたい

私だけでも幸村さまの帰る場所になりたい


そんな願いも神様は聞き入れてくれなくて…

私は独り、涙を零した


「泣かないでくだされ、某がずっと隣に居るでござる」

「幸村さま、愛しております」

「某は一生涯貴女だけを愛することを誓おう」


「幸村さま…」





人の一生は、誰かを愛しぬくにはあまりにも短くて、
誰かを護りゆくのもまた難しくて、

でも、でもまだ私に時間が残されているのなら、

私は精一杯、幸村さまを愛したいと思った





(人の世が、死に逝く定めと云うのなら、私は死ぬまで彼を愛したい)





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前サイトから。
初心な幸村が書けません






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