機人変人Ifエンド

機人変人のネタを捏ねる上で生まれた分岐点のひとつです。
あくまでもIfの話としてお楽しみ下さい。

あらすじ)OSのバグで動作不良を起こす大和。
バランサーやセンサーに不和を起こし歩く事も侭ならなくなっていく。
システムをいくら組み直しても改善されずに苛立ち連日徹夜する元親。
憔悴してついに倒れてしまう。












元親の調べた現在の状態と設計図、自分のバイタルサインから不和を引き起こしてるのは自分の魂だと気付く。
無機物に魂。つくりものの躯に耐えられる訳がない。
静かに寝息を立てる元親の頬を撫でながら、システムリカバリを行う事を思いつく。

自分が宿る前まで戻す。
不和を引き起こしているのが自分だとわかった今、魂を消してしまえば不和は解消されるのではないか。
方法ならば設計図にある。
魂が抜けても自立稼働が出来るよう、新たな電脳を組みながら静かに気持ちを整理していた。





数刻後。

夜の帳は空に溶け、星々は朝靄に霞んでいる。
ひやりとした朝の冷気を感じながら、体内に組み込んだ新しい電脳が正常に作動している事を確かめた。
現在のスペックには劣るが、安定した実用と増設が可能なはずだ。

寒さに身を丸める元親に別れを告げる。
ありがとう、と動く唇に発声機が伴わない。
撫でようと伸ばした手は空を切り止まる。

ああ、ここまでか。


触れられないのを悔やみながら。
ひとつ、ふたつとシャットダウンの手順を踏んで行く。
徐々にその機能を停止していく躯。
眠りに落ちるように薄れて行く意識。

寒ささえも感じなくなった頃、元親がふと身じろぎ薄目を開ける。

「...ぁ…大和...?」
「......」

元親、と唇を名で象った。


色を失った視界さえも薄まっていくなかで
叫びながらがたがたと自分の肩を揺する元親の、涙の溜まるその隻眼に。
一筋の涙を流す自分が映っていた。


もう声も聞こえない。



揺すられる感覚もない。




魂と、躯のリンクが切断されるその瞬間に、意識の残滓を振り絞り唇を動かした。




読み取れただろうか。
元親。

自分の弟のように

きらき ら と し た目で

こ ちら を み い た 初 面 の
時。


走馬灯 の ように かんでは 消 る



その 思 出が 消 て い く



伝わ っ た か な




「あり が と う




















//////////////////


数瞬の後に再起動して無機質に挨拶の言葉を発する人形を見て泣き崩れる元親。
最後に遺した電脳のプログラムに組み込まれた、大和と同じ声色で発せられたメッセージはひどくあっけなかった。

「おはよう、元親」



繰り返し大和、大和、と名を呼ぶ。その裾に縋る。
ぼろぼろと頬を伝う涙を無表情で拭う目の前の傀儡に、もうこれが大和ではない事を知る。
どうした、元親。と。
どこか痛いのか、と。
大和と同じ声を再生する傀儡の無機質な胴ををかたく抱き締めた。

堅い質感を背に受けながらじわりじわりとその身に事実が染み渡って行く。

大和はもういない。
完全に理解したその瞬間。手は傀儡の後頭部へと伸びた。
人工皮膚を引き剥がし、背骨の付け根、その節へと指を掛ける。唯一の、外部からのシャットダウンスイッチへ。


指で強く押せば、呆気なく ぱちん と鳴った。
駆動系が停止、油圧が抜け崩れ落ちる傀儡。
硝子の双眸に自分の悲痛に歪んだ顔を写しながら。 元親 おやすみ、と発し、瞼を閉じる。

停止した傀儡を抱きながら天高く慟哭した。
海を翔ける鬼の叫びは、もう彼には届かない。



ああ おやすみ 大和

また、な




//////////////////




そして幾時か後。
長曽我部軍の兵器にして大和と呼ばれた傀儡は、長曽我部元親の墓地敷地内に建てられた社の最深部に軍神として祀られる事となる。
華々しく繁栄した長曾我部家の中では異色の中の異色とされた当主にして海賊の元親の名と共に、そっと語り継がれていく。




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