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鳥の声で目が覚める。

…ぴちち、ぴいぴいのような可愛らしいものではなく。
カラスのぎゃあぎゃあとけたたましいものなので目覚めは割と良くない。

重い布団を横に寄せ、腰を一ひねり、二ひねり。
ぱきんぱきんと鳴ったところで上下の瞼がようやく離れてきた。

今日は日曜。ましてや春休みの真っ只中である。
ようやっと慣れてきたスマートフォンに電源を入れて時間を見れば朝7時。上々な滑り出した。
よいせとベッドから降りて着替え、洗面台へ。


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目玉焼きには黄身がふたつ。ついてんな今日。
パンくずを零しながらトーストを咀嚼した。
残ったパン耳を片手にかじりながら指折りで潰した予定を数える。


「今日はどうすっかなー…教科書は捨てたろ。制服は片付けたろ。押入れの中…あ、」

半年ほど前に片付けた際、どっちゃりといらないものを突っ込んで閉めた箱を思い出した。
あれ捨てよう。

つまんだパン耳を口に放り込んでごっそーさん。
ゴミ袋片手に押入れの前に向かった。


海外に出張している両親のお陰で、学費生活費に困ることはない。
ごく普通の一軒家を学生が使うというのもなんとも贅沢な話だ。
戸締りにだけは気をつけて、料理は母の残した分厚いスクラップブックで。
不自由なく暮らしているが何分一軒家は一人で暮らすには広すぎる。

最後に入ったのがいつだったかを思い出せないまま、和室の襖を開けた。


「確かここ、に」

かたんと押入れから音がする。

「…いやいや。鼠かな」

近寄り、取っ手に手をかけたら。
指先にばちんと電気。
思わず一歩下がった。

直後に破裂音。
白い閃光が走り、襖が俺に吹き飛んできた。

「っえ、ちょ」

成す術もなくばぁんと跳ね飛ばされる俺。壁に背中をぶっけた。痛い。
腹部にもう一発衝撃が来て、止まる。


ふらりと揺れる視界を眉間に押し込んで目を瞬けば、腰を抜かす俺の腹の上に茶色の大男が横たわっていた。



「…冗談きっついだろー…っうぶ」

朝飯吐きそう。
軽い眩暈に甘えて俺は意識を手放した。
げろっちゃったらごめんな。押入れの精(仮)。




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