「ねえジャブラ、いいかげん夜が恋しいんだけど。月が見たいんだけど。なんでここはずっと昼なの?太陽サンサンなの?ねえ、ジャブラ。なんで?なんでジャブラはジャブラなの?なんで?ばかなの?しぬの?」

「っだあああうるせえな!」


マシンガントークで攻められたらもうどこからツッコミをいれたらいいんだかわからない。
ああもう、毎日毎日昼ばっかでうんざりしてるのはみんななんだよばかやろう。寝るときだってカーテンを閉るという人工的な夜だし、夕日なんて任務の際にしか見ることができない。ずっといると頭がおかしくなりそうだ。(だからここにいるのは頭が沸いている奴らばかりなんだろうな。特に化け猫とか長官とか化け猫とか化け猫。)


「夜が見たい月が見たい星が見たい!ちょっとジャブラなんとかしてよ」
「なんとかって…無理があるだ狼牙」
「…はあ…」

なんだよそのあーあ、みたいにわざとらしい呆れた顔。こいついちいち腹立つな。

「わたしたちの月歩はなんのためにあると思っているの?」

…読めた。こいつの考えが。お前こそ月歩をなんのためにあると思っているんだ。俺たちの仕事道具だぜ。

「さあ、ジャブラくんや、さっそく月歩で夜と昼の境目まで連れていってくれたまえよ」
「いやなんで俺が背負う前提なんだよ」
「月歩を長い間使ってるとしんどいの。筋肉痛になっちゃうの。だって女の子だもん!」
「え?女の子?どこどこ?」
「ここ、ここ!」
「どこどこ?」
「ここ、ここ!」
「どこ、…ああもうしつけえな!ほらいいよ乗れよ」
「わあい!」


なんのためらいもなく背中にひっつくから乗れよって言ったにも関わらずなんだかどきどきする。変なところで警戒心がないから心配になるんだよなあ。
そういや前にも「男は狼なんだぜ」って教えこんだけれど返ってきたのが「じゃあジャブラはわんこなんだね!」これは完璧に喧嘩を売っているとしかとれない。
まあ、ななしは妹みたいなものだし、俺がちゃんと変な男たちから守ってやらなきゃなあ、それこそ狼から主人を守る忠犬のように。うんうん。


「うし、行くか」
「楽しみだなあ!」
「行き方教えてやるから、今度からは一人で行けるようにしろよ」


そうすれば好きなときにいくらでも夜が眺めるぜよかったな、って窓から飛び出て月歩を使っての空中散歩。ぽん、ぽんとリズムよく空気を踏みながらななしが落ちちないようにしっかり支える。


「え、一人で?やだよジャブラ次回も一緒に行こう」
「まあ、おまえ一人なら迷子になる確率あるもんなあぎゃはははは!」
「うーん、それもあるんだけど、」
「けど、なんだよ」

「…ジャブラと見たい、から」


そんな、照れたみたいにぼそぼそ喋るから、思わず空中で足を踏み外しましたよ、っと。

やさしい夜をむかえにいこう

(あいつはちゃんと女の子をやっていた)



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