波打ち際に転がっている元は人間だったこの物体は今となっては息もせず、ただの肉塊と成り果てた。こいつは確かトラファルガーのとこにいた女だったはず。流石は高額ルーキーのクルー、その辺にいる男なんかよりずっと戦いがいがあって久しぶりに楽しむことができた。
うつ伏せになっていたのでくつの先で仰向けにするとちゃぷりと波紋が広がる。よく見ると顔は普通の女じゃあないか。海水に浮かびばらついている髪をひと束掴み指で撫でてみた。おれがやったことだから当たり前だが、至るところに痛々しい切り傷。そこから滴る鮮やかな朱の血液は海水へ染みだし、濃い青の大海原へと溶けていく。その様子はこの世のものとは思えないほど美しくまさに絶景と呼べる。

「……」

この光景を誰にも見せたくないと思った。自分の心に渦巻く感情がなんなのかは知らない。だが赤の他人のこいつに対してとてつもないほど大きな独占欲が沸き上がっているのは確かだ。
一刻も早く隠したかった。手から武器を外し横抱きに持ち上げる。おれが着ているワイシャツが濡れるがそんなことも気にならないほど急いて船へ戻りたかった。
どう愛してやろうか、顔がほころぶばかりである。


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