教科書を忘れてきたから見せてくれと無理矢理机をくっつけられたのが数学の授業が始まってから10分後のこと。
そして現在、不良であるユースタスキッド君は私に寄り掛かって爆睡中。

(ほんと、どうしてこうなった)

今すぐにでも起こしたいのは山々だが恐くて起こせないでいる。

「……い、ちご」

「はい?」

その時キッド君が発音したのは見た目に合わない果物の名前。変な寝言だなとだんだん笑いが込み上げてきた。いちごって…いや、わたしも好きだけどさ。寝言で言うほどではないよ。
案外可愛い人なのかな。くすくすと肩を揺らし笑ったせいで起きてしまったらしいキッド君は慌てて謝った。

「うぉっ!?わりぃ寝ちまった」

「気にしてないから大丈夫」

申し訳なさそうに目線を反らし眉を下げている。
こういう顔、するんだ。今までは名前と見た目くらいしか知らなかった男の子に興味が湧いてくる。なぜか顔が熱くなる。

「あ゛ー…詫びに何か飲み物買ってやる」

がしがしと頭をかきながら頬を赤く染めて言葉を探しているキッド君。

「……じゃあ、いちご牛乳がいいな」

「いちご牛乳好きなのか」

「なんとなく飲みたいなーと思ったの」

「そうか、おれは好きだぞいちご牛乳」

向けられた笑顔が眩しくて、胸の奥が疼きだした。
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