その大きな身体からは考えられない俊敏な動き、真剣な眼差し光る汗。一生懸命グラウンドを走り練習する峨王の姿は何時間見ていても飽きないと思う。ああもっと惚れちゃうよ。
一段落ついたのか、どすどす足音をたてて歩きながら飲み物よこせと叫んでいる。

「お疲れ様、はいどうぞ」

「ん」

少し濃いめに作ったスポーツドリンクを嚥下するたび上下に動く喉仏が妙に厭らしい。1分もかからずに飲み干して空の容器を返された。

「みんな頑張ってるねー」

「そうだな」

「いかにも青春って感じがしてすき」

だらだらと意味の無い会話をしているこんな時間もなんだか楽しく思う。



「お前、」


不意に話が途切れた。じっとこちらを見つめてくる峨王。居心地が、悪い。

「お前、くせえ」

それ女の子に対しての台詞じゃないでしょ。でも、匂ってたかな。

「、……ごめん。汗かいてるから臭かった?」

目を合わせることができなくて靴を眺めた。汚い。

「違う。髪があいつと同じ匂いがした」

髪……そういえば昨日シャンプーを替えた。

「あいつって誰?」

気まずそうに目線を反らされ、言いにくいのか眉間に皺を寄せている。

「円子、お前が円子の野郎と同じ匂いしてやがるから、」

それって。自意識過剰な奴だと思われるかもしれないけど、心臓の高鳴りと好奇心に負けてしまいおそるおそる聞いた。

「峨王もしかして…嫉妬してる?」

質問に答えてはくれなかったけど、再び練習に戻った峨王の耳がちょっぴり赤く染まっていた。
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