お腹のあたりが、あつい。痛いなんて感覚をとっくに通り越して、あつい。なのに指先は冷たく冷えていって、がくがくと手は震えるし、視界はだんだん狭くなる。ぐらり、と膝がくずれる感覚と目の前が真っ暗になった瞬間、私の意識はぶつりと途切れた。 次に目をあけたときには見慣れた和室の天井が見えて後悔した。そして冷や汗がただただ止まらなかった。 やってしまった。 そう思うや否やこの部屋から脱出するため、勢いよく掛けられていた布団を蹴飛ばせば真向かいの襖がすーっと開いた。 「なかなかいい格好だね」 どうやら浴衣を着せられていたらしく布団を蹴りあげたせいで、それはまあ、はしたない姿を見られた。にっこり、ときれいな弧を描く雲雀の口元と笑っていない目に思わず表情が強張った。わたしの冷や汗が止まらない原因、それが恋人である雲雀だ。大きな怪我をする前に早くやめろ。君に何かあってからじゃ遅い。散々言われていた言葉がぐるぐると頭をまわる。 「……………ところで、」 「は、い?」 「怪我しないんじゃなかったの?」 わたしの真横に座り、ぎろりと切れ長の目を突き刺すように向けてきたのでそのまま俯くしかなくなった。君、前に言ってたよね? と確認しわたしの口から直接言わせようとしている辺り、本気で怒ってるとみた。ああ、まずい、これは非常にまずい。 「君は僕に嘘をつくの?」 「…ち、がう」 「じゃあ、なんで無茶な突入なんかしたの?」 本来なら一度立て直してから行くべき状況だった。長く続けば消耗戦となる。消耗戦となればこちらの有利さが増す、……はずだった。極度の幹部不足からいまひとつ決着がつかない戦況。しかしこれ以上ここに人員は割けない。だから行くしかないと踏んで精鋭数名を引き連れた単独チームでの突入を試み、作戦は成功。しかしわたしは負傷からの出血が多すぎて危うく死にかけたらしい。 そして後始末なんかの仕事が増えた、という訳だ。あああ、申し訳ない。 「無茶なことして、迷惑もかけてごめん」 「……本当にね」 「仕事減らすつもりが増やしてるし」 「…………」 「でもこれなら書類関係なら全然出来るからバンバン回してもらってへい、」 「ちょっと黙って」 「……はい」 「まさか君さ、僕が仕事が増えて怒ってると思ってるの?」 「えっ違うの?」 心なしか不機嫌さが沸き上がるように増した気がする。はあ、と呆れたようにため息をつく姿に嫌な予感しかしない。まずいまずい!私、なんかしたかな。 ひ、雲雀? と、戸惑いがちに声をかければ視界がぐるんと動いた。ぼすっ、と再び布団に埋もれる感覚と僅かな痛みに驚き、目を見開けば顔の横に両手をついてお腹の横に両膝をおろし、真剣にこちらを見下ろす彼の姿があった。その姿はまるで焦っているようにも、確かめようとしているようにも見えた。 「分かってない」 「…なにを、」 「僕がどれだけ心配したか、分かってない」 撃たれたって聞いて、心臓が止まりそうになったんだからね。、と小さな子どもがすがり付くように苦しげに顔を擦り付けてくるから、私はただなにも言えなくなった。 話したところでどうせ君は信じない |