夢 | ナノ


降水確率100%のなか任務について、相手の銃弾を避けようとしぬかるんだ土に足をとられて足を滑らせて捻挫したうえに見事に銃弾も横腹にいただいた。今考えたらある意味ヴァリアークオリティーよりもすごいよねこれって、ミラクルすぎるよね。そんでもって情けなさやら傷の痛みやら不甲斐なさからくる苛立ちなんかから敵さんを必要以上にたこ殴りにした後、治療もせずにすぐさま報告書を出しに行けば怪我をボスに笑われさらには患部にワイングラスを投げつけられた。今すっげえ軽く話したけどめちゃくちゃ痛いんだよこれ。

そして長時間びしょ濡れになっていたせいで私は熱を出した。弱り目に祟り目とはこのことかと思った。さらに銃弾が患部の中途半端な位置で止まってしまっていたせいで治療は半端なく痛かった。情けないことに麻酔なしだったから尋常じゃないくらいぼろぼろ涙が出た。頭はさらにガンガン痛くなった。いやボスの拳骨に比べたらこれくらい屁でもないんだけどね?でもしばらく休養するようにと医療班の人に言われてしまったから任務には出られないけれど、他にもやれることはたくさんある。だから休む必要もないだろうと執務に明け暮れてた。

やっとこさ完成した資料をボスに提出しに行こうと廊下に出たら目の前がだんだん狭くなった。

うわ何これ気持ち悪い。そんなことを考えてたらぶっ倒れた。来るであろう衝撃に目をぎゅっと閉じた。でも、いつまでたっても衝撃はこない。重たい目蓋をすこしだけ上げて見てみたら、心配そうに私の顔を覗き込むスクアーロがいた。「大丈夫かあ?」なんて言うスクアーロの目は切なげに揺れた気がした。

ああスクアーロ 任務終わっ たの おつかれ さ ま

そう言おうとしたらそこで私の意識はぶつりと途切れた。「いろは、」不安そうに私の名前を呼ぶ声が聞こえた気がした。

目が覚めたら見覚えのあるようなないような真っ白な天井が見えた。おかしい、私の部屋の壁はうすいベージュがかかったような色なのに。わからなくて首を動かして見れば、椅子に腰かけたスクアーロがこちらに気づいた。ああ、スクアーロの部屋か。


「起きたか」

「…す、く…あーろ…?」

「おいおい、声も枯れてんじゃねえかあ」


ふっ、とため息をつくようにスクアーロは笑った。ああ、今の安心した、って言ってるみたいな表情好き。だって、あれは多分スクアーロが私にしか見せない表情だから。だから、すごく好き。

でも、どれくらい寝たんだろう、倒れる前より頭がすっきりした感じ。でもズキズキとまだ僅かに違和感と痛みを感じる。無理やり起き上がろうとすれば、スクアーロに手で制され元の位置に戻されてしまった。


「無理すんなぁ、まだ傷も治ってねぇんだ」

「…それ、誰に聞いたの」

「ベル」

「あんにゃろ…」


豆腐の角に頭ぶつけて死ねなんて無茶は言わないけどせめて豆腐を踏んでそれはそれは気持ち悪い思いをすればいいと思う。私が怪我したことは黙っててほしいと念入りに釘をさしたにも関わらず、あっさりと話している同僚にむけてそう願わずにはいられなかった。


「今度からあいつのナイフ任務のたびにへし折ってやる」

「うお゙おい…返り討ちにされるぞぉ」

「大丈夫。バレないようにやるから」

「…頼むからこれ以上心配させるなぁ」

この職場で心配させることすんな、なんて無理な注文にも程がある。でも愛しげに細められた眼とやさしく頭を撫でる手に微笑むことしか出来ない私は暗殺者失格かなあ。

レン/defect/0607

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