「幸福喫茶3丁目」より安倍川葛さんと希名子さん
「希名子、」
「…何よ」
諳が死んで6年、希名子と籍を入れて5年が経った。頑なに変化を拒んでいた柏も、そして草も随分大きくなって、希名子との間にもさくらが居る。
「…後悔、しとるか?」
「は…?」
希名子はきょとんとしたあとすごい顔で俺を睨んだ。あ、やばい。殴られるか?
「…諳のお葬式のとき、この世の終わりみたいな顔してた」
「…ん?」
「子供たちには気付かれないようにしてたみたいだったけどバレバレだったのよ」
「…なんやソレ…恥ずっ」
「でも…こんな風に諳のこと愛してたんだ、って思ったわ」
だから貴方と再婚したの、と希名子は言った。昔から希名子が諳と一緒にいたことは良く知っている。でも、だけどそれじゃあ、希名子の気持ちは?
「希名子は、どーなんや?」
「…え、だから諳の…」
「それは諳やろ」
「え?」
「やのーて、希名子は」
肩身の狭い思いとか、俺の知らん苦労とか、無い訳がなくて。それでも希名子は良くやってくれた。それは全て諳のためなのか。
「私…は」
「うん?」
「幸せ、よ」
「…そうか」
「幸せよ!どうして後悔ないかなんて聞くの!」
「…スマン」
希名子の目からはぽろぽろと涙が落ちていた。
「意地悪したかった訳じゃ、ないんやで?」
「分かってる…けどっ」
「………」
「もっと自信持ちなさいよナンパ男っ!」
どっちが好きとか、決められない。でも今の俺の妻は希名子だ。希名子しかいない。
「あーっオトンがオカン泣かしとる!」
「さいってーやなオトン!」
うるさい息子たちの気配に希名子が静かに笑ったのを良く覚えている。
(幸せにしたい、その一心で。)
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安倍川夫婦…大好きでした…。オトン超好み。番外編見て昇天したのを思い出してそんなとこからの妄想です。
ぶっちゃけ安倍川家族がだいすき。