図書館に行くのはもう日課になっていた。本を借りるため、それから小牧さんに会うため。もちろんお仕事が忙しい時は仕方ないんだけど、顔が見られたらなんて期待して行ってしまう。だから今日もちょっとだけ祈りながら図書館にやって来た。

(あ、小牧さん…!)

さっそく小牧さんを見つけたのだけれどやっぱり仕事中。忙しそうだから借りる本を開いて読むふりをしながらちらちらと小牧さんの様子を見ていた。小牧さんは優しくて、かっこよくて、本当にパーフェクトな人だった。
と、そこに女の人が歩いて来て小牧さんに話し掛けた。すっごい美人。年も小牧さんと同じくらい。2人は心なしか楽しそうに話を続けている。こんなことが気になってしまうのは子供っぽいかもしれないけど、やっぱり心配になってしまう。だって比べてしまったらあの人の方が良いかもしれない。そう考えると怖い。私はそっと席を立って本棚の中へ逃げ込んだ。

しばらくたっても出て行く勇気が無くてこっそり反対側を伝って家に帰ることにした。今日借りれなかったら仕方ない。明日借りれば良いんだから…。
自動ドアを出たところで肩を叩かれた。

「毬江ちゃん?」
「小牧、さん」

昔のようには聞こえない彼の声。それでもちゃんと読み取って返した。小牧さんは私の手をとって入り口の前から少し横に避けた。それから携帯を取り出して

「本、借りないの?」

と打つ。私も携帯を取り出して「今日は…」と打って見せた。小牧さんはほんの少しだけ淋しそうな顔をした。本当は違う。勝手に知らない女の人にやきもち焼いて、小牧さんに迷惑掛けてるだけだ。分かっているのに、こんなことをしてしまう自分が情けない。私はそっと小牧さんの眼を見た。

「毬江ちゃん、どうしたの?」
「ごめんなさい、私…」

急に小牧さんに抱きしめられて驚いた。私は大きな彼の腕の中で瞬きをするしかない。

「何か泣いちゃいそうだったから」

補聴器のついた耳元でゆっくりそう言ってくれたから私は小牧さんの声を拾うことができた。小牧さんの胸に顔を埋めながら私は思った。ちょっとだけ自惚れてても良いのかな、愛されてるって。


(おこちゃまね)
---------------------------------
「図書館戦争」より小牧と毬江でした。小牧さんと毬江ちゃんの話が好きで好きで。個人的に書きたかったのでかいてみました。


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -