小さな頃から塚田の姿ばかり探していた。背が高くて猫背で童顔で、歩き方だって足音だって、私はきちんと知っている。どんなに大勢の中からでも塚田を見つけ出せる自信があった。だって塚田の全部が大好きだったから。

(…にしても、すごい人だわ…)

今日は随分前から塚田と会う約束をしていた。お兄さんに貰った高そうな服を着てメイクも髪のセットまでして、塚田を待っている。もう私は塚田の一番近くには居ないけれど、塚田のことを忘れたりなんかしなかった。目を閉じても塚田の顔をはっきり思い出せる。行き交う人をちらちら見ながら塚田の姿を探していた。と、手の中の電話が鳴る。塚田からだった。

「絢さん、もう着いてますか」
「うん。塚田は?」
「私ももう居るんですが、何しろ人が多くて…」

急いで人混みに目を凝らしたけど、塚田は見つからない。どんなに大勢の中からでも塚田を見つけ出せるって思ってたのに、私の眼は役立たずだ。塚田に早く会いたい。あの薄っぺらいくせに頑丈な胸に抱き着きたい。早く、早く…


「絢さん!」

後ろから声がした。思わず振り向くと焦った顔のたれ目がこちらをのぞいていた。

「塚田!」
「え、絢さん、何で泣いて…?まさかどっかの男に…」
「違うの、違うから平気よ、塚田」

塚田の胸に顔をぎゅっと押し付ける。塚田はわけの分からないまま私の頭を撫でてくれていた。そうか、いつだって私が塚田を見つけられていたのは塚田のお陰だったんだ。ずっと私の事を探し続けて居てくれたのは、塚田の方だったのね。

「どうしちゃったんです、絢さん」
「何でもないのよ」
「…それなら良いですが…」

いつだって塚田は私の方を見ていてくれるから、怖い事なんてひとつも無いのよ。

(視線の先のわたし)
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「学校ホテル」1巻「振り向いて、つかだ!」より塚田と絢でした。リクエスト下さってありがとうございました。
モリエさんの全作品のキャラの中で塚田が一番、というくらい好きなので書けて良かったです!


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