※年齢操作
真っ白な部屋に純白のウェディングドレスを纏った女性が1人。その後ろ姿に見とれていると彼女は私の存在に気が付き振り返った。あの時のような幼げな顔付きを見受けられず、大人らしくなったその顔にドキリと胸を高鳴らせた。
「…ああ、久しぶりやねぇ」
白い衣装と白いベールに包まれた褐色肌。顔付きは変われど、10年前と変わりのないその笑顔に思わず微笑めば、彼女もまた白い歯を見せ微笑んだ。
「急に現れるなんてどないしたん、セイン」 「君の結婚に祝福を、と言えば信じて貰えるか?」 「…一応アンタを信じとくわ。天使に祝福されるなんて縁起がええしな」
困ったように眉尻を下げながらも、彼女らしいその発言に思わず私は苦笑した。 10年前、私は彼女を魔王に捧げる花嫁として誘拐した。着せた花嫁衣装もちょうど同じような純白のドレス。目を細めてリカを見れば、彼女は気恥ずかしそうに笑う。
「これ、あの人が選んでくれたドレスやで、似合うやろ」 「…ああ、とても似合っている」 「アンタにしてはやけに素直やな」 「私は思ったことを口にしただけだ」 「なんやねん、それ。逆に照れるわあ…」
俯いた彼女の頬にそっと触れて、顔を上げさせる。 彼女の瞳に写る私は10年前と何も変わりのない少年のような容姿。彼女は大人に成長したというのに、どんなに悔やんだとしてもこれは天使としての宿命だ。どうしようもないこと。
「…セイン、ウチは幸せになるで。相手は魔王でも何でもない、ウチの好きな人と幸せになる」 「…そうか。ならば私は祝福する」
前よりも伸びた髪を手に取り、毛先に唇を落とす。その瞬間リカの目は見開かれたが、それはすぐ笑顔に変わる。 …このまま彼女をヘブンズガーデンに連れ去ってしまおうか。そして私の部屋に寿命が来るまで閉じ込めて、…いややめておこう。こんな幸せそうな顔のリカにそんなこと、私ができるはずがない。
「幸せになれ」 「……分かっとるよ」
自分の頬に置かれた私の手に触れ、リカは幸せそうに笑ってそう言った。
何を愛せば満たされるの?/title by icy 20130217
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