「どーよ、この格好」
部室に入った瞬間目の前に飛び込んできたのは、何故かチアガールの格好して誇らしげな表情をした瀬戸だった。何でそんな格好をしているんだ、ていうかただでさえ衣装のせいで露出が多いのに何故わざわざお腹を出すんだ、と状況を飲み込めず頭の中でぐるぐる思考を巡らせていると、苦笑した神童がフォローを入れてくれた。何でも学校内の倉庫から出てきたチアガールの衣装を音無先生が引き受け、マネージャーたちによければ、と渡したらしい。ああ、音無先生こういうの好きそうだもんな。いやそうじゃなくてだ、
「三国さん、どう?こういうの好みじゃない?」
別に、まあ、どちらかといえば好みだ。…いや、これは言わないでおこう。 しかし直視できないからといって、視線を下げた俺が馬鹿だった。普段は一昔前のスケバンのようなロングスカートで隠れている脚が晒されているじゃないか。太陽の日差しから隠れている分日焼けをしないその白い脚、あと他にもノースリーブから覗く二の腕やら、大きく開いた胸元。それに思わずゴクリと唾を飲み込む。
「何か言ってくれよ」
黄色いボンボンを持った両手を腰に置いて俺に詰め寄る瀬戸に、もう我慢の限界だと、俺は彼女の肩を押し返し距離をおく。突然のことに目をぱちくりと瞬きさせた瞳と目が合う。俺は直ぐ様着ていたジャージを脱いで、瀬戸に着せる。部室のソファに座っていた浜野が口笛を鳴らすのが聞こえたが今は無視しよう。
「三国さん?」 「あ、あんまり肌を見せるな」
精一杯言えたのがこの一言。意味を理解したのか、瀬戸は「馬鹿じゃねーの!」と叫んで俺の足に蹴りを入れ、それから手に持っていた黄色いボンボンが飛んできた。その黄色を退けれると見えた赤色。自覚して恥ずかしくなるなら初めからやめてくれ!とりあえずその叫びは心の中に閉じ込めておこう。
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