「中学は怖いな」

重たい紙袋を持ち深いため息をつけば、隣を歩く真狩は苦笑した。
今日はバレンタイン。好きな女子はいない訳だから然程興味はなかったし、意識もしていなかった。それを今日俺は酷く後悔した、何かしら対策を打っておけば良かったと。
小学校なんかの時はクラスの女子が情けでくれるなどだけだったが、中学がどうだ。それはもう色んな人からチョコを貰った。同じく大量のチョコを手にした先輩たちは「そりゃサッカーで全国までいった訳だし」なんて平然と言うものだから、慣れは怖いと思った。

「真狩も、結構貰ってたよな」
「木瀧ほどじゃないよ」

ちらりと真狩の手持ちの袋を見ればラッピングされたチョコが見えた。かわいらしいそれらに思わずムッとした。嫉妬と、いうのだろうか。

「…真狩って甘いもの嫌いだよな」
「それが?」
「…それ俺が貰う」
「はあ?お前それ以上チョコ増やして食べきれるのか」
「食べきれる、平気」

チョコの入っていた袋をブン取って手持ちを増やす。我ながら馬鹿だ。

「…嫉妬は見苦しいぞ」
「うるさい、真狩の癖に」
「俺だってお前はそうモテるのは面白くない」
「…あっそ」

ふいとお互い顔を反らす。隣の真狩を盗み見れば顔を隠すマフラーから覗く赤。あんなこと自分から言っておいて照れてるのが、真狩らしいと思った。




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