「おはようバン、はいチョコ」
「今年もくれるの?ありがとう、アミ」
登校中前を歩いていたアミに声をかければ、挨拶のついでと言わんばかりにチョコを渡された。家が近所で幼馴染みという間柄、バレンタインにチョコを貰うことは不思議なことでもなんでもなくなっていた。
今年はクッキーか。包みを開けて中身を見ると香ばしい良い匂いがした。さっき朝ご飯を食べてきたのに、涎が出そう。
「ふふ、今食べても良いよ」
「良いの?でも勿体ないなあ」
「平気よ、まだ家に余りはあるし…食べたかったら放課後バンの家に渡しに行くわ」
「いる!」
いきなり大きな声を出したからか、はたまたクッキーの追加はいらないと思っていたのか。驚くアミを横目にクッキーを1つ摘まむ。さくさくと噛めばほんのりとチョコの味がした。
「もう、ゆっくり食べてよね!愛情たーくさん籠ってるんだから!」
「勿論感謝してるよ!ありがとう、アミ」
「…どういたしまして。あ、口にクッキー付いてる」
「えっ」
くすくす笑うアミに口の端についていたクッキーをすくわれる。恥ずかしいなんて思いながら、朝からなんだか嬉しいことがたくさんだ。今年はそんなバレンタインだった。