はあ、と静かな部屋に私のため息が漏れた。リビングの開いてるスペースにある大きなクリスマスツリーを横目に見てから、また目の前の湯気がたつ料理を見て、もう一度ため息をつきたくなった。

今日はクリスマスイブ。パパは相変わらず出張だからママと二人でクリスマスパーティーをする予定で、親子二人で仲良く料理を作っていたら突然の電話。ママは電話に出ると私をちらりと気まずそう見てから「分かりました」と言った。どうしたの?と言えば仕事は入ってしまったと、言うわけだ。
作りかけの料理をほっとくのはアレだと思って、完成させて自分の分だけをお皿にとり、リビングの机に運ぶ。家族用の広いダイニングテーブルに少し豪華な料理が私の目の前に一人前。両親の出張や仕事は珍しくないし、一人は結構慣れている。のに、リビングのクリスマスツリーと飾りが虚しさを増幅させ、じわりと目に涙が溜まる。
情けないなあ、涙を袖で拭い料理に手をつけるところだった。ピンポーン、とインターホンが鳴るのだ。こんな夜に一体誰だろう、バンかしら。ハァイと力の抜けた返事をして玄関のドアを開ける。

「やぁ、アミくん」
「ゆ、悠介さん?!どうして…」
「たまたま近くを通りかかったんだ、ご両親は?」
「…仕事なので私一人です」

俯いて呟く私に悠介さんはポンと頭に手を乗せた。じんわりと伝わる熱がとても落ち着く。するとなんだかまた目頭が熱くなってきて、じわりと涙で悠介さんの顔が歪んで見える。慌てて服の袖口で涙を拭っていると頭にあった悠介さんの手が優しく背中に回された。ぎゅう、と弱く慰めるように悠介さんに抱き締められた。

「ゆ、悠介さ」
「寂しかったね」

ぽんぽん、と私を安心させる為だろうかか、何回か背中を優しく叩かれる。
あぁ、もう、なんで貴方はこんなにも私に優しいんですか?甘えたくなっちゃうじゃないですか。そう言うと貴方は「子供なんだから甘えなさい」と言った。
子供扱いは正直ムッと来たけど、今は貴方に甘えさせてくださいと私は彼の背中に腕を回して、力いっぱい抱き締め返した。
涙なんていつの間にか引っ込んでいた。





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