ぽつんと机の上に置かれたキャプテンマーク。その赤色は本来あるべき場所にないからか、普段見るよりも霞んで見えた。

白咲がこの白恋からいなくなって約2週間はたった、と思う。俺の中での時間の流れが曖昧過ぎて覚えていない。あぁ、でも雷門との試合が3週間程前だから大体合っているのかと、自問自答。
吹雪先輩が言うには、シードである白咲はフィフスセクターの帰還命令に従い、白恋を去ったらしい。先輩も止めたらしいけどフィフスには逆らわないと白恋に残ることを断固拒否。あいつ、変な所は頑固だったからな…なんて呑気に考える俺も俺なんだけど。

白咲がいなくなったのに気がついて、あいつの使っていたロッカーは確認したらユニホームは綺麗に畳んであり、その上にこのキャプテンマークがちょこんと乗っていた。
それで、吹雪先輩に「次のキャプテンは雪村だ」なんて言われてそのキャプテンマークを渡された。着けたことは一度もないし着ける気もさらさらなかった。俺は試合中周りなんか見ないで突っ走るタイプだ。キャプテンなんて到底無理だから周りの見える真狩にやらせたらどうですか。そう言ったけどこれは雪村は持ってるべきだ、そう言われて拒否をされた。

「なんなんだよ…」

吹雪先輩も白咲も、みんな自分勝手だ。
机の上にあったキャプテンマークをそっと着けてみた。よくある布ゴム性のそれはきつくもないはずなのに俺の腕を締め付けている。重量も感じないはずなのに、重く感じた。

「雪村、そろそろコーチが来るぞ」
「…あぁ」

部活のドアを開けて入ってきた木瀧に返事をしてベンチから立ち上がる。
もう一度左腕のキャプテンマークに触れた。重いしきつく感じるし、出来ることなら今すぐ外して床に投げつけたいそんな気分だ。深く溜め息をつくと前を歩いていた木瀧が振り向き俺の腕を見る。あぁ、と言いながら少し笑う木瀧に苛立った。

「似合ってるんじゃないか?」
「先輩にそれはないだろ…」
「俺は本当のことを言っただけだし、…それに吹雪コーチが言うには白咲が帰ってくるまで限定のキャプテンだろ?」
「!…当たり前だ!白咲が帰ってきたら投げつけてやる!」

ついでにパンサーブリザード、いやアイシクルロードだ!付け足せば木瀧は更に笑ってグラウンドに走っていった。
キャプテンマーク辺りの布をがしりと掴み、それから俺も木瀧を追うようにグラウンドへ走っていった。





多分続く



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