「悠介さん」
ベッドの上で眠っている悠介さん手を伸ばした。それ以上進むなと郷田に肩を押さえられた。お願いよ郷田、離して。私は目で訴え、懇願したけど郷田は俯いて首を横に振る。酷い、酷いわ。周りを見るとみんな私を哀れな目で見ているように錯覚した。
「悠介さん、目を覚まして下さい」
急に力が抜けて床に膝をついた。郷田が押さえててくれたからそこまで痛くなかった。いや、ショックが大きすぎて何も感じないの間違いかも。
「悠介さん」
ゆっくり立ち上がって悠介さんの眠るベッドに歩み寄る。今度は誰にも止められなかった。
下ろされた髪の毛。外された眼鏡。瞑られた目。初めて見るものばかりだった。
「悠介さん、起きてください」
何を言っても悠介さんは答えてくれなかった。もう優しい声で「アミくん」とは呼んではくれないの?
悠介さんの手に私の手を重ねる。前に私が我が儘を言って、繋いでもらった時の手はこんな冷たくなかった、とても優しい暖かさだったのに。じわりと涙が溢れてくる。目に溜まった涙が頬を伝って悠介さんに掛かる布に落ちた。
「さようならは嫌よ」
返事は勿論返っては来なかった。
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