「月が綺麗だ」
「…そうですね」

悠介さんはベランダから夜空を見上げながらそう言った。
あの夏目漱石は「I LOVE YOU」を「月が綺麗だ」と訳した、と本で見たことがあった。頭の良い悠介さんはそれを知った上で、そういう意味で言ったのだろうか。…いいや、多分純粋にお月さまが綺麗だと言ったのね。
ベランダまで行き、ぼんやりと悠介さんの隣で同じく空を眺める。真ん丸で綺麗に光る月に思わず目を細めた。

「…拓也から君は頭が良いと聞いたよ」
「そうなんですか?」
「夏目漱石が“I LOVE YOU”をどう訳したか知っているかい?」
「…もちろん、知ってますよ」

期待した通りに悠介さんが言う。にっこり笑って私も答えた。
悠介さんは笑って私の頬に手を添えながら口を開いた。

「月が綺麗だ」


//月が綺麗だ



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