南沢さんはかっこいいからやたらモテることは別に仕方がないことだとあたしは思ってる。だって南沢さんは見た目もサッカースタイルもかっこいいのは事実だし?まぁあたしの好みじゃないけどね。
でも、なんでそれにあたしが巻き込まれなきゃいけないのかは全く理解が出来ない。

「ちょっと聞いてるの?!」
「一応聞いてるっすよ」
「ふざけんじゃないわよ!」

あたしは恐れ多くもサッカー部で南沢さんとツートップとして、所謂コンビみたいなものを組ませて貰えて仲良くもさせて貰っている。サッカーの先輩として尊敬していたから凄く嬉しいことだし、誇りに思ってる。でもそれを目の敵にしてくる女子たちがやたら絡んでくるのが厄介だ。
しかし野次を飛ばされることはあったが呼び出されたのは今回が始めてであたしも焦っている。でもあたしは何も悪くない。ある意味実力で獲た地位だ。それをサッカーもやっていない女子に否定されるなんて屈辱しかない。

「南沢くんとアンタじゃ不釣り合いなのよ、このちび!」

不釣り合い。その言葉がやたら耳に残る。さっきも言った通り南沢さんはかっこいい。性格は、ちょっとあれだけど女子は「クールで素敵」とか騒いでいる。あたしみたいなチビで色気もないちんちくりんとは次元が違う。それよかあたしを囲っているこの校則違反だけど、髪を巻いたり化粧をしておしゃれな先輩たちのがマシかもしれない。

「…だからって、サッカーとは関係ないじゃん」
「サッカーがなけりゃ、南沢くんはアンタなんかと馴れ合わないわよ!」

じわりと目に涙の膜が張った。悔しくてスカートを握りしめる。知ってる。サッカーさえなければ馴れ合いはない。知っていた。知っていたけど、なんだかズバリと言われるとかなり悔しかった。おかしい。南沢さんのことは尊敬しているだけで、好きでもなんでもないはずなのに。

「サッカーがなくたって俺のお気に入りだよ、倉間は」

背後から声をかけられた。声の主は話題に出ていた南沢さんだ。嘘だと先輩たちは目を見開いていて、かたかたと肩を震わす奴もいた。そりゃそうだろう、大好きな人の後輩を苛めている現場をその大好きな人に見られたんだから。
南沢さんは黙ってあたしの肩を掴んで自分の胸元に引き寄せた。南沢さんの顔を見上げる。とても怒った様子でいつもポーカーフェイスの南沢さんが珍しい、そう思った。

「なんだっけ?俺と倉間が不釣り合い、だっけ」
「…一体どこから聞いてたんすか」
「お前が呼び出されるところから」
「そんなっ」

一人が叫んだ。人が悪いなぁ南沢さんも。ていうかさっさと助けて欲しかったんすよ。

「お前らみたいなケバい女より、この色気のない倉間のが好きだんだよね」

一言余計っす。あたしはそう呟いた。女の先輩たちは走って逃げ出す。あぁこりゃ明日は噂が流れるよね、余計なことに巻き込まれるのはごめんなのに。
あたしはスルリと南沢さんの腕から抜け出した。南沢さんは名残惜しそうにあたしを見ていた。

「おい、さっきのはスルーかよ」
「何が?」
「好きだって言ってんだろ」
「…ケバい女よりあたしみたいな色気のない女のが良いって意味っすよね?」
「冗談言うなよ」
「あたしのこと、好きなんすか」
「好きだぜ」

真っ直ぐな目で見られた。女子がこんな先輩に惚れるのも、あたしが南沢さんのことを好きかもしれないことが、少しだけ、わかった気がした。


//無呼吸の恋@自慰



「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -