くらりと視界が歪んだ。ふらりと身体から力が抜けて倒れるのが分かった。あぁ、熱中症か?今日は随分暑かったし、汗がいつもより多めに流れ出ていた。倒れたことに気がついた茜と葵が叫んでいた。その声を聞きながら意識を沈めていった。


「ん…」
「あ、起きたか?」

目が覚めて、真っ先に白い天井が目に入る。声のするベッドの横に備え付けてある椅子には三国先輩が座っていた。布団の被っていない顔に触れるひんやりした空気に身を震わせる。保健室か?ここ。

「熱中症だそうだ、ゆっくり休め」
「…アンタが運んできたワケ」
「まぁ、円堂監督が不在だったからな」
「なっ」

かぁ、と柄にもなく赤面して起き上がる。恥ずかしい。その感情と同時に頭に激しい痛みが走る。痛い、と頭を押さえた。

「まだ全快じゃないんだ。おとなしくしていろ!」
「…」

三国先輩に肩を押されて起き上がった身体がそのままベッドに倒される。キーパーだからか、男だからか知らないけど力強いなぁ。触られた所に熱が隠った気がした。心臓がどきどきとうるさい。それに構わず三国先輩はあたしに布団を掛けて立ち上がった。

「じゃあ俺はそろそろ戻るな」
「あっ…」

立ち上がって背中を向けた三国先輩のユニホームの裾を掴む。まるで行かないでとでも言っているようだ。三国先輩はキョトンとあたしを見る。恥ずかしくって俯くあたし。三国先輩はあたしの頭にポン、と手を乗せた。

「瀬戸?どうしたんだ?」
「…行かないでよ」
「え?」
「行かないで、って、言ってんだよ」

俯いていた顔を思いきって上げてみる。三国先輩の顔は少し赤く染まっていた。きっとあたしだって羞恥で真っ赤だ。

「最後まで、看てろよ」
「…そうだな。仕方がない」

彼は座っていた椅子に座り直してニカッと笑う。その笑顔、嫌いじゃない。むしろ好きだ。

「早く治せよ。とにかく今は寝ろ」
「あぁ、うん」

ゆっくりと瞼を落とすとすぐに意識がふわふわし出す。ゆっくりと頭を撫でられている感覚。気持ちが良い。少し微笑んで、あたしは眠りについた。


//サマーサマー



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