02/02(16:41)

「大人になるって、どんな感じなんだろうね」

暗い色のゴーグル越しに見える瞳は真っ直ぐ私を見つめていた。引き込まれそうなそれに私は思わず息を飲む。

「…そんなこと知らないわよ、そもそも私たちは大人になんか、なれないんだから」

そう言ってなんとなく俯けば、じわりと涙で滲む視界。情けない、そう思えば思う程に涙が目に貯まる。エルドラドに、大人に対抗したって、結局は死ぬのが怖いんだ。ぽたりと地面に涙が落ちた瞬間に私の身体は、サルの腕の中に引き込まれる。

「サル、」
「怖いのは君だけじゃないよ」

はっとして気づく、背中に回されるサルの手がかすかに震えていることに。唇を噛み締めてそっと手を彼の背中に回した。

「情けないわね、それでもフェーダの皇帝なの?」

普段から言っている強気な言葉も、泣いて所々息が詰まるせいでいつもより覇気がなくなる。情けないのはどっちなんだか分からないわね。

「君の前でくらい、皇帝休ませてよ」

その言葉に不覚にも、ドキリと来てしまう自分が悔しい。顔を見られないように抱き締める腕に力を込める。彼は悟ってくれたのかなんなのか、何も言わずに背中を撫で続けてくれた。


∵きみが隠しきれなかった涙は見なかったふりで慰めた(title by hrm)
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