03/01(19:05)

しばらく歩いたところで立ち止まって四方を見回し、自分を落ち着かせる為に髪を弄り、そしてため息をついた。
完璧に道を間違えた。ガルシャアを先を帰らせたのが誤りだったんだ。彼の鼻があれば出口が分かるのに。そもそも、こんな広いスタジアムを作ったサルくんが原因では?懸命に原因を探そうとするけど辿り着くのはこの僕が「迷子」になったという事実。

「貴方、サルの客よね」

背後から声を掛けられ、振り向けば1人の少女が立っていた。今までの試合には出ていないが、サルくんの名前を出したということはフェーダの人間だろう。

「違うの?」

返答の遅い僕に苛立ちを見せる表情。気は長い方ではないらしい。

「一応客、かな」
「ならサルの所へ行く?こんな所に居られても迷惑だしなんなら案内するけど」
「いや、僕は帰りたいんだ」

帰りたい?眉間にシワを寄せる彼女は突然笑い出した。そして「もしかして貴方、迷子なの?」と言い放つ。あまり触れて欲しくない所に、触れてくるのだから気に入らない。

「機嫌を害したなら謝るわ。それで、出口に行きたいんでしょう?案内するわよ」

笑ったお詫びに。そう付け足して足早に歩き出す彼女の後を追う。きっと彼女に着いていけばすぐ出口に着くのだろう。一先ず安心だ。

「ねえ、君の名前は」
「ほら、出口よ」

開く扉から見えた眩しい光に思わず目を細める。極端に明るいのは、好きではない。

「あ」

彼女のいた扉を見るとそこには誰もいない。どこだと後方を見れば彼女がこれまた足早に歩いていた。今叫んで彼女を呼び止めれば名前を知れたのかもしれないが、そういうのは好みではない。恐らく彼女もそうだろう。


∵今はその背中に焦がれていたい/title by 寡黙
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