◎ザノクオル 「ザ、ザノウ?」 少し、ほんの少しだけ、からかったつもりだった。だっていつまでも手を出してくれないザノウが悪いんだから、しょうがないと思わない? でも彼の様子は可笑しくて、いつの間にか、私の身体はベッドに押し付けられていて。真剣な彼の目に恐怖を感じ、肩を小さく震えさせてしまう。ザノウは私の肩を見て視線を私から外して、小さく口を開いた。 「お前が、悪い」 「ザノウ?」 「俺がずっと、耐えていたのも知らずに」 「…ふ、ふふ」 自然と漏れた笑い声を聞いて、ザノウが不機嫌そうな顔でまた私に視線を戻す。 「何を、笑っている」 「あぁごめんなさい、すごく嬉しいの」 また一笑いしたところでザノウに口付けられる形で口を塞がれる。意外だった。 「あまり俺をからかうな、自制が効かなくなる」 「…別に効かさなくても良いのに」 「クオル!」 「ふふ、ごめんなさい」 ← |