ザノクオル


「ザ、ザノウ?」
少し、ほんの少しだけ、からかったつもりだった。だっていつまでも手を出してくれないザノウが悪いんだから、しょうがないと思わない?
でも彼の様子は可笑しくて、いつの間にか、私の身体はベッドに押し付けられていて。真剣な彼の目に恐怖を感じ、肩を小さく震えさせてしまう。ザノウは私の肩を見て視線を私から外して、小さく口を開いた。
「お前が、悪い」
「ザノウ?」
「俺がずっと、耐えていたのも知らずに」
「…ふ、ふふ」
自然と漏れた笑い声を聞いて、ザノウが不機嫌そうな顔でまた私に視線を戻す。
「何を、笑っている」
「あぁごめんなさい、すごく嬉しいの」
また一笑いしたところでザノウに口付けられる形で口を塞がれる。意外だった。
「あまり俺をからかうな、自制が効かなくなる」
「…別に効かさなくても良いのに」
「クオル!」
「ふふ、ごめんなさい」



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