アルベタ


深夜、眠れなくてベッドから抜け出し、共同で使う水道へ向かう。近づくにつれて水の出る音が廊下に響く。誰か止めるのを忘れたのだろうか、そう思うと自然と早くなる足。
「…ベータ?」
こんな時間に誰もいないと思っていた水道に、ただ佇む一人の少女。ゆっくりと振り向く彼女と目があった。
「アルファ、」
「どうしたんだ?」
「…分からないけど、眠れないの」
目を伏せて小声を呟く彼女はいつもとは違い、とても弱々しい。
「奇遇だな、私も眠れなくて困っていた」
「…そう」
ゆっくり目を細めて、微笑んで、蛇口を回して水を止めたベータ。そして私の前に立ったかと思うと、抱きついてきた。思ってもいなかったことに戸惑いはしたが、慣れてはいた。
「本当にどうしたんだ?」
「人肌が恋しいだけですから、お気になさらずに」
気にするなと言われても、この体制は困ったものだ。彼女に聞こえないよう小さくため息をついてから、彼女の背に手を回した。




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