◎アルベタ 深夜、眠れなくてベッドから抜け出し、共同で使う水道へ向かう。近づくにつれて水の出る音が廊下に響く。誰か止めるのを忘れたのだろうか、そう思うと自然と早くなる足。 「…ベータ?」 こんな時間に誰もいないと思っていた水道に、ただ佇む一人の少女。ゆっくりと振り向く彼女と目があった。 「アルファ、」 「どうしたんだ?」 「…分からないけど、眠れないの」 目を伏せて小声を呟く彼女はいつもとは違い、とても弱々しい。 「奇遇だな、私も眠れなくて困っていた」 「…そう」 ゆっくり目を細めて、微笑んで、蛇口を回して水を止めたベータ。そして私の前に立ったかと思うと、抱きついてきた。思ってもいなかったことに戸惑いはしたが、慣れてはいた。 「本当にどうしたんだ?」 「人肌が恋しいだけですから、お気になさらずに」 気にするなと言われても、この体制は困ったものだ。彼女に聞こえないよう小さくため息をついてから、彼女の背に手を回した。 ← |