アミレンと真実


これの続き


「好きだったの」

ポツリと静かな空間に溢れる少女の声。私はゆっくりと顔を上げて彼女に視線を向けた。そして目が合った。弱々しく笑う彼女。私は何を言って良いかも分からずに、口を開いてまた閉じた。

「…私ね、貴方のお兄さんが好きだった」

その言葉に今度こそハッとした。兄さんが好きだったと言う少女が目の前にいる。勿論そんなデータはどこにもなかったし、私は知りもしなかった。

「でも私、そんなこと彼に、レックスには言えなかった。ううん、言いたくなかった」

ふふ、と何がおかしいのか口元を押さえて笑う彼女。女らしさの欠片が微塵もない私からしたら、彼女はとても眩しかった。

「だってあの人ね、私に貴方を重ねて名前を呼んでいたのよ。貴方の、真実さんの名前を知ってやっと分かったわ」
「兄さんが、私を?」
「ええ」

何て返して良いか、本当に分からなくなった。彼女は今、さぞかし私が憎いだろう。

「貴方が憎いなんて思ってないわ、ただあの人が馬鹿だっただけなんだから」

私の心の中身を見透かしたように言う。その閉じた目を縁取る長い睫毛、そして端麗な顔に思わずどきりとした。

「本当に、馬鹿な人」

か細く鈴の音のような声が、やけに耳にこびりついた。




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