止まらない
最初はどこまでだったら許してくれるのかという興味心からだった。
こいつは俺のすることをどこまでだったら受け入れてくれるのか、単純に興味があった。
だって気にもなるだろ?
何度裏切っても、
周りが何て言っても、
たとえ涙を溢すことになっても、
こいつはいつだって薄っすら笑って許してしまうんだから。
誰だってわかることなのに。
俺なんて信じたって…何の特にもならないってことぐらい。
それは体力づくりを兼ねてモンスターと戦って、夕暮れ時になってようやく街まで戻ってきたある日。
宿屋での部屋割りは相変わらず俺とジュードが同室だった。
ローエンがエリーゼと同室ってのはどうなんだと多少は思うけど、
この部屋割りを決めたレイア曰く俺やジュードと同室よりは百倍はいいそうだ。
今日は…まぁ、おかげで俺もやりたいことがやれて調度いいんだけど。
部屋に入りベッドに腰掛け手袋を外しながらふぅと一息ついた。
「アルヴィン先にシャワー浴びてきていいよ」
白いバスタオルを差し出しながらそう言うジュードに
「サンキュー」
と返しながらそれを受け取って風呂場に向かう。
少し熱いシャワーを浴びながら考えるのはジュードのこと。
真っ白なバスタオルと同じくらい純粋で、汚れた所なんて何も知らないであろう彼にいったい何をしてやろうか。
白が黒に侵食されていくのを想像すると何だかたまらない気持ちになった。
口角が自然に上がっていくのがわかる。
そんな悪い大人な自分の表情をシャワーで流しながら風呂場から出ると、
ベッドヘッドに凭れ掛かりながら本を読んでいるジュードがいた。
「ジュード君、何読んでるの?」
濡れた髪をわさわさとバスタオルでぬぐいながら、同じベッドの端に腰を掛け、本を覗き込む。
意味のわからない記号や長ったらしい文章がみっしりと書かれていた。
「医学書だよ。
最近勉強する暇がないから今日ぐらいはって思って」
本から目を離すことなく淡々とジュードが答える。
こっちを見もしない瞳に若干面白くないなと思いつつも兼ねてからの予定通りに俺はジュードを誘った。
「なぁジュード君、今日は俺と本には載ってない違うこと、勉強しない?」
なんだこの変態じみた言い方は。
でもジュードの意識をこっちに向かせることには成功したんだからまぁいいだろう。
「何を言ってるのアルヴィン?」
まったく意味がわからないという表情でこっちを見てくる。
そんな瞳をじっと見返すと居心地が悪かったのかこいつからは珍しく自分から視線を外して
「…僕もシャワー浴びてくるよ」
本に栞を挟んでベッドサイドに置くと、そう言ってベッドから降りようとしたジュードの手を掴む。
「だから、さ。
最近ずっとおまえと一緒の部屋で俺も欲求が溜まってるんだよ。
常に監視されてるみてーで夜遊びはおろか自慰の一つも出来やしねぇ。
…だからなぁいいだろ、いいよな、ジュード?」
自分勝手で最低な言い分ばかりを並べ立てるとそのままジュードをベッドに押し倒した。
「なっ!ま、待ってアルヴィ…」
そしてストップをかけようとしたそのうるさい口を、自分の口で塞いだ。
肩にかけていた白いバスタオルが汚れた床に落ちたのがわかった。
最初はどこまでだったら許してくれるのかという興味心からだった。
口では色々言いはしたが、キスだってからかってやろうと思って…ちょっと触れる程度で止める予定だった。
シャワーを浴びながら考えてたことだって、まさか本気でやるつもりはなかった、はずだ。
俺だって11も年の離れた、それも男相手にそこまで飢えちゃいない。
そうだったはずなのに、じゃあ今夢中でこいつにキスをしている自分はいったいなんだっていうのか。
簡単にキスを許すジュードも、
そんなジュードに苛立ちを隠せない自分も、
それ以上に進もうと勝手に動く自分の両手も、
全部全部理解不能、意味がわからない。
ただわかるのは、ジュードの口内は甘く温かくて唇を離せない現実だけ。
止まらない
そう思った時にはもう冗談では引き返せない所まできていた。
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