キミとのセカイ22
それはある日の夜、お風呂に入って自分の部屋で今日こそは電話をしようかどうしようかと悩みながら携帯をいじっていた時。
突然ぷるるるると鳴り出した電話に僕はビックリして思わず携帯を床にダイブさせるところだった。
それをなんとか食い止め画面を見るとアルヴィンと名前が記されている。
今まさにかけようかどうしようかと悩んでいた相手からの電話に僕は急いで着信ボタンを押した。
『よぉ、ジュード君久しぶり、元気にしてる?』
「ア、アルヴィン…!!
う、うん僕は元気だよ。
アルヴィンこそ…元気?」
久しぶりに聞くようなアルヴィンの声。
実際にはまだ別れてたった1週間しか経っていないのに、なんだか凄く懐かしく感じる。
『俺はいつも通り連日バイトに勤しんでるよ』
「そっか…よかった、元気そうで。
あ、部屋はぐちゃぐちゃになってない?料理はしてる?洗濯も…」
『はは、おまえやっぱ相変わらずだな。
俺がやってると思うのか?』
アルヴィンは苦笑したかと思ったら僕の質問に質問で返してきた。
やってると思うのかって…そりゃ思いたいよ、思いたいけど僕だって4ヶ月一緒に生活してきたんだからアルヴィンがいかに家事が不得意なのかくらいわかってる。
だからきっとこれは質問じゃなくて、やれていないというアルヴィンなりの返事なんだろう。
「もう、アルヴィンったら駄目じゃない」
仕方がないなぁと思いながらも僕がそう返事を返すと、その後暫く沈黙が続いた。
というのも、アルヴィンが何も返してこないからだ。
僅かな呼吸音だけは電話越しにも伝わってくるから電話が切れているというわけじゃない。
「…アルヴィン?」
僕はどうしたのかと思ってアルヴィンの名前を呼んでみる。
そうしたら小さい小さい声で『…なんだよ』という声が聞こえた。
「え?ごめんアルヴィンよく聞こえなかったからもう一回言って…」
『…だからっ―――俺は駄目なんだよ…おたくがいなくなると全然駄目だ」
僕の声にアルヴィンの声が被さる。
一瞬、何を言われているのかの意味が僕には理解出来なかった。
「な、何を言っているの…!」
思わずそんな言葉が口から出てくる。
だってアルヴィンは僕よりずっと大人で、バイトもしてるし一人暮らしだってしてて、とにかく僕みたいに誰かに頼らないと生きていけない子供じゃない。
僕を預かってくれてたのだって、ローエンから頼まれて仕方なくってことくらいわかってた。
だからアルヴィンがそんな事言うだなんて想像もしていないかった。
『…なぁ、もう一度俺んちに来いよ、ジュード君がいた頃と比べたら色々…まぁちょっと汚いけど…遊びに来るだけでもいいからさ』
それに鍵、渡したままだろって言うアルヴィンに僕はなんて返事を返したらいいのかわからない。
ただ自分の目が思わず見開いてしまうほどビックリしたのと、すっかり忘れていた鍵の存在を思い出した。
確か鞄の内ポケットに入れたままだ。
「…いいの?僕が行っても迷惑じゃない?」
まだアルヴィンの言葉が信じられなくて、再度尋ねてみる。
すると即答で
『そんなわけねーだろ、こっちが誘ってんのに。
それにジュード君の作った料理が久しぶりに食いたいんだよ』
と返事が返ってきた。
僕は潤み始めた瞳から涙が零れ落ちそうになるのを左手でぐいっと拭う。
「うん、ありがとうアルヴィン。
僕もずっとアルヴィンに会いたかったんだ」
そして電話越しでも伝わるように精一杯の笑顔でそう答えると、小さかったけれど『俺もだよ』って声が聞こえた気がした。
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