シュガール! | ナノ








何であの人たちと一緒にコートに来るんだ。というか、忍足さんが図書室に行ったときから嫌な予感がしていた。だからって、こんなことってないだろ。周囲からの好奇の視線が痛すぎる。

姉さんは少し抜けていて、何をしでかすか分からない。



「どうかした?」



やわらかく微笑みながら言葉を繋ぐ。俺が姉さんのもとに来た理由が皆目検討も着かないとでも言うように首を傾げて見せた。それには思わずため息をつく。

…姉さんには、この鈍感さを少しでも改善してもらいたい。

姉さんからは見えない位置にいる跡部さんと忍足さんは、俺の様子を面白がるように笑っている。抗議できない分、余計に腹が立つ。



「…分からないなら、いいです。姉さんはコート内にあるベンチにでも座って居てください、いいですよね跡部さん」

「あぁ、構わねえよ」

「行くぞ鳳」

「え、ちょっと待ってよ日吉」



息着く暇もなく、早口でそれを伝えてコートに戻る。慌てて後を追ってくる鳳の気配を感じたとき、跡部さんと忍足さんの意地の悪い声が聞こえた。



「名前ちゃん萎縮してるで」

「まったくあいつは…」

「そんなことないよ?」



わざとらしく、俺に聞こえるように言ったのがよくわかった。にやにやと笑う2人の思うように動かされるのは癪に触るが、仕方ない。

俺は立ち止まって振り返り、跡部さんたちの会話を遮るようにして姉さんの手を引く。それから再びコートに向かって歩きだした。



「えっ、ちょ、若?」



あわてふためく姉さんの声は、この際無視だ。跡部さんと忍足さんの満足気な顔も、俺は見ていない。ただ、鳳の平和ボケした顔には腹が立ったから、軽く頭を叩いておいた(それでもずっと笑ってる鳳はどこかおかしいんじゃないかと思う)。



「若、どうしたの?」

「心配なので、俺がベンチまでつれて行きます」

「私そこまで方向音痴じゃないよ」

「そういう意味じゃ…いや、もうそれでいいです」

「何それ、変なの」



俺に捕まれていない方の手で、口元を覆って笑う。そんなに変なことを言った覚えはないが、姉さんが楽しいならそれでいいかと思ってしまう自分もいる。



「やっと素直になったなあ」

「あぁ、苦労したぜ」



だから、声が大きい。どうしてそんなにも俺に構ってくるんだよ、あの人たちは。生意気な後輩なんて、放っておいた方が楽なはずなのに。



「跡部くんと忍足くん、若にとっていい先輩だね」

「…どうしてですか」

「だって、あんなにも若のこと心配してくれてるじゃない」



あの人たちはただ楽しんでるだけだ。そう言いたかったけど、姉さんがあまりにも嬉しそうに笑うから、それは言葉になる前に消化されていった。その変わり、全身が羞恥の赤に染まる。まさかこんなことを言われるなんて思ってもみなかった。これだから姉さんは何をしでかすか分からない。本人はすべて無意識だから余計に厄介だ。

俺は微笑む姉さんから視線を反らして、この感情を紛らわすように下剋上だ、と小さく呟いた。






マシュマロのような頬っぺた
(クソ、顔が熱い)




20111213



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