シュガール! | ナノ








今朝本人が言ってた通り、跡部はまだ部活に顔を出してへん。話によると書類作りやとか。俺はテニス部部長と生徒会長って言う二足のワラジを穿いてるそんな跡部が、時々宇宙人やないんかと疑う時がある。ただ跡部のカリスマ性が溢れてるだけなんやろうけど、ほんま、ある意味尊敬するわ…。

部活開始から随分と時間が経った。アップを兼ねた自主練を済ませて時計を見ると、もう跡部の指示する練習メニューの時間や。周りを見てみれば自主練が終わってる部員が多数居て。ダラダラ喋ってる奴が目に入るぐらい部員の雰囲気も緩くなって来とるし…やっぱり部長がおらなあかんなぁ、なんて思ってみたり。まぁ、それは平部員だけやなくて俺含むレギュラーにも当て嵌まるんやけども。



「そろそろ跡部呼びに行かな」



と、言うても場所なんて把握してへんし、ってうぉ!後ろに樺地…!ビビるっちゅーねん…毎回思うけど、気配殺して人の後ろに立つなやっ。



「跡部さんは、図書室だと思います…」

「…え、あ、ほんま?おおきに。ほな呼びに行って来るわ」

「ウス」



なんや、今日は生徒会室やなくて図書室か。書類作るんに資料でも要ったんやろなぁ…なんて。こんな思考、まさに他人事やな。そんなこと思いながら数歩踏み出すと、今度は後ろから熱い視線。可愛らしい女の子からのやったら笑顔で手振るんやけどな、そんな熱い、とちゃうねん。人生上手く行かんなぁ…。樺地はギリギリまで気づかんだけど、今度は敵意剥き出しやからよう分かるわ、なぁ…日吉?

振り向くと想像以上の顔付きで睨まれてとったことに気づいた。オイオイ、そない睨まんでもええやろ…俺なんかしたか?無言の攻防戦に負けた俺が思わず苦笑いすると、日吉は鳳に呼ばれて身を翻した。って、今舌打ちしたよな?…あかん、ほんま泣きそうかもしれん。ポーカーフェイスが売りなんに、今んなって謙也のヘタレた性格が移ってしもたんかも…ハァ。トボトボと効果音が付きそうな足取りで、俺はため息を吐きながら図書室に向かった。















***



図書室に着く頃には俺の傷心も大分癒えて…あ、そこのお譲ちゃん、単純とか言うたらあかんで。まぁ、日吉のあれは所謂ツンデレっちゅーことにした。中二やからな、なんやかんやで恥ずかしいんよ、そうそう。──この思考を顔に出さないよう気をつけて、俺は代名詞であるポーカーフェイスを貫いたままで図書室の扉を開いた(勿論ノックも忘れてへんで)。けどそれは、扉を開いた先に広がる世界を見たら容易く崩れ落ちた。


それはもう、ガラガラと凄まじい音を響かせて。



「失礼しま、す…!?」

「アーン?…忍足じゃねぇか」

「こんにちは」



氷の帝王と称されるあの跡部が、この学園の女王の名を我が物にするひひひ日吉さんと微笑みを絶やさずに静かに談笑しているからだ!オプションには窓から差し込む夕日をバックに…。こんなシーン見たら誰も平常心でおれへんやろ!関西人も標準語になってまうくらいのサプライズやわ!



「…おい、何してんだよ」

「ハッ!…いや、すまん。心の葛藤が…とりあえず写真撮ってええ?」

「止めろ」



携帯を取り出したら間髪容れずに否定の言葉を頂いた。滅多に見れん幻のコンビを遺しておきたい一心を分からんのか跡部よ。ちゅーか俺、こない近くで日吉さん見たん初めてや。お人形さんみたいやなぁ。綺麗な髪の毛してはる…。きっと綺麗な人は爪の先一つまで惚れ惚れするぐらいに綺麗なんやろなぁ。



「え、と…はじめまして。日吉名前です。弟がお世話になってます」

「おお忍足侑士ですよろしゅう。……え、弟?」



微笑みを絶やさない日吉さんの後ろに居た跡部が、ハァ、と業とらしくため息を吐いて口を開く。説明すること自体が面倒くさそうなその口から出た言葉を理解するまで、随分時間を使った。



「…………日吉さん、が、日吉のお姉さん?」

「はい!よろしくお願いします、忍足くん」



若と被ってしまうので私のことは名前で呼んでくださいね、そう言って微笑む日吉さ…いや、名前ちゃんに眩暈を覚えた。同じ名字やったけど、今まで全然気にしてなかった…言われてみればどことなく顔の雰囲気が似ているような気が、するような。髪の毛の色も同じや。けどそんな、そんなことってあるんか…!驚愕の事実過ぎて頭が追い付かへん現象が起こっとる…容量エラーになりそう。

そんな中、跡部はいつもの調子で我関せず。業務連絡のように再び爆弾を落っことした。「コイツも一緒にコートまで行くからな」…え、コートってテニスコート?名前ちゃんも行くってことか?テンパりながらも話を聞くと、日吉と一緒に帰るって…俺も帰りたいなぁ、日吉代わってくれ。それと同時に今朝の疑問が解消された。そうか、日吉は照れてたんやな…!やっぱあの子はツンデレや、愛でるべき存在やなっ。



「ほな早速行こか。部員も待ってることやし」

「ありがとう!」



俺の返事を待ってたんか、名前ちゃんに誘いの言葉をかけると花が舞ったかのような華やかな笑顔と暖かい言葉が返って来た。それは今まで見た微笑みの斜め上を行くもので、何と言うかもう…







ふわりと笑う君はわたあめ味
(きゅ、きゅん死にや…!)




20110924



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -