《兄さん誕生日おめでとう。プレゼント届くだろうから楽しみにしててね》 思わず口元が緩んだ。 弟の幽は人気俳優で忙しいにも関わらず、兄である俺の誕生日には必ずメールを送ってくれる。しかもプレゼントまで用意してくれているとは流石だと思った。と言っても、毎回バーテン服だから多分今回もバーテン服だろう。まあ臨也との喧嘩やその他諸々でボロボロになったりするから、助かるんだが。 「シズちゃん、なーに見てんの?」 「えっ、あ、いや…」 ひょこっと臨也が俺の背後からいきなり携帯を覗き込んで来た。慌てて携帯を伏せたがどうやら遅かったらしい。すると臨也は俺の隣に座った。 「…今日、誕生日なの…?」 「…まあ、な」 震える声で臨也がそう問うてきたので目を泳がせながら頷いた。ソファに座っている俺に詰め寄って来たかと思えば、臨也の目から液体が流れた。 「お、い…臨也…」 泣きそうな顔してるなとは思っていたが、まさか本当に泣くとは思わなかった。俺が悪いのか、これ。 「俺…今日が…シズちゃんの誕生日だって知らなかったし…だから、何もプレゼント用意…してなくて…」 「…あー……」 怒って泣いているのかと思っていた俺には予想外の言葉で、余計に罪悪感が募る。今日が誕生日だと臨也に教えていなかった自分が悪い。 「今日が誕生日って言ってなかったんだからよ、いいって」 「…情報屋失格かもしれない」 「は?」 「シズちゃんの誕生日くらいっ調べられたはずなのに…!」 おいおいおい、お前一歩間違えれば立派な犯罪者に成り兼ねないぞ。って、もう犯罪者っぽいんだが。 しくしくと泣いている臨也の頭にぽんと手を置いてやるともっと泣きやがった。何だこのあまのじゃく。 「っ…理由、教えてよ」 「……わかった」 俺が臨也に誕生日を言わなかった理由。俺は何度も臨也に誕生日を聞かれたが答えようとしなかった。応えてはいたが。たかが俺の誕生日で祝ってくれる奴なんて家族くらいで、他は俺が生まれて来なければよかったなどと思っているに違いない。こんな怪物みたいな力を持って暴力を奮っている俺は憎まれる存在なわけで。だから家族でもない人に祝われるのはむず痒かった。 「そういうわけで、言わなかった」 「…シズちゃん」 臨也を見てみれば涙は止まっていて、真剣な顔で俺を見ていた。思わずたじろいでしまう。 「なん、だよ」 「俺、シズちゃんの家族でもなんでもないけどね、」 「………」 「むず痒いとか思わせないくらいに祝いまくって、慣れさせるから。いつか家族同然のお祝いさせてもらう」 「……お、う…」 臨也は美形だからこういう風に真剣に見つめられたりしたらドキドキと心臓の動きが速くなって、臨也が言っている言葉も耳に入らないくらい緊張した。 「って、プロポーズなんだけど…わかったの?シズちゃん」 「…っは、あああぁあ!?」 「あ、やっぱわからなかったか」 「いやっいや、おま…っ何処にプロポーズの言葉なん、か…っ」 あまり聞いてはいなかったけどそりゃあ何となく頭に入っている。それよりプロポーズって結婚だろ、そもそも男同士で結婚なんて… 「家族同然のお祝いって言ったから、まあ家族って事だから結婚でしょ。分からなかったんだし、じゃあもっかい言う」 「……」 「シズちゃん、結婚しよう」 「…無理だ」 「えっ何それここまできてその答えってどういう事!」 「いや…普通に考えて無理だろ。男同士だしよ」 「…そりゃあ、社会的には結婚した事にはならないけど、俺らの中で結婚したって事でいいじゃん」 まあそうするしかねえよな。 でも…例え俺らの中だけの結婚でお遊びみたいな事でも、真剣に考えてしまうのはやっぱり馬鹿なんだろうか。 臨也が返事は、と急かす。あー俺今顔すげえ赤いんだろうなーとか思いながら意を決して口を開いた。 「…結婚、する…」 「っシズちゃん…!大好き本当大好き愛してる!生まれてきてくれてありがとう!」 「…っ、もしかしてこれが誕生日プレゼントとか言うんじゃ」 「うん、これ。考えたらこれしかなくて。いいでしょ?」 「いざや、」 「ん?」 ソファの隣にいた臨也を見て、俺は何を思ったのか抱き着いた。 「えっシズちゃん…!どうした、の」 「わかんねえ…。でも、」 ありがとな 幸せで埋め尽くせ _________ 『セレーノ』のもかさまより静誕でフリーだった素敵小説を強奪してしまいました!! 随分と懐で温めていたので、掲載が遅くなってしまって…´ゝ`すみません; それにしてもこの臨静の可愛さ!! 爆発するかと思いましたいや本当に^▽^ 本当になちさまのお話には憧れます…! 最初読んだ時も再び読んでもにやにやしちゃいます! そして勢い余って床をごろごろと…(笑) なちさま、掲載許可ありがとうございました! |