※日々デリ前提なサイ津+デリックです。 「津軽ーっ」 「うん」 「つーくんっ」 「うん」 「つがるんっ」 「うん」 またやってる。俺は即座にそう思った。俺よりすこし遠目にいる兄とその恋人の姿にやっぱりげんなりする。 最近、俺の兄であるサイケとその恋人である津軽は前にもましていちゃついていた。誰の目にとまっていても、やたらくっついて名前を呼び合う。本人達からしたらべつに気にすることなんてない、もしかしたら逆にいちゃついてやろうとか思っているかもしれない。でも見る側、所謂第三者達はそうはいかない。確かに気にしない人もいるかもしれないが、少なくとも俺には無理だ。どうしても見てしまっていろいろなプラスの気分が削がれていく。 ああ、こんなことなら兄ちゃんに会いに来ずに日々也んとこいけばよかったなあ、なんて。 話しかける気も削がれて相変わらずいちゃついている2人を眺める。 どうやら兄ちゃんは津軽の呼び名を連呼しているらしい。新しい呼び方でもすんのかな。つがるんとかぶっちゃけ似合わないよな。 因みに兄ちゃんは津軽の膝の上だ。津軽の腕の中にすっぽり収まっていてなんだか人形みたい。うん。これからはサイケちゃん人形と読んでやろう。心の中で。 津軽は始終にこにこしてる兄ちゃんを優しい表情で見てる。……いや、見守っている、の方が正しいかな。まあとにかく表情が優しい。ひたすら、優しい。俺と同じ顔をしているんだから俺もああいう表情できるのかな、と思ったが有り得ないと瞬時に否定。俺にあの聖母みたいな顔はできない。たとえ出来ても気持ち悪いだけで、津軽だからこそ似合う表情だ。……顔は一緒だけど。 俺がいくら眺めていても気付かないカップルはひたすら己の世界に浸っているんだろう。なんだか甘味を脳が感じ取ってしまい振り払うように頭を振る。 あっまいのは食べ物だけで充分だ。いや、もしくは俺達のコピー元、オリジナルである静雄と臨也だけで。まああの2人が甘い雰囲気になるなんて滅多にないけど。いや本当に。 変わらず俺の視線に気付かない2人にゆっくりと踵を返す。もういいや、半分どうでもいい用事だったしな。気付かれないようにゆっくりと足を進める。いや、まあ来たときすら2人は気付かなかったんだろうから気休め程度だけれども。 「デリック?」 背後から声がする。あああと心が絶叫。気付かれたくなかった。ここまで来たのなら潔く帰って日々也のとこ行きたかったのに。 心境がそのまま動作になったかのようにゆっくりと振り向く。声からして俺を呼んだのは兄ちゃんだ。 「どうしたの?わざわざ来て」 「珍しいな」 ピンクと青の瞳がこちらを見つめていた。兄ちゃんは津軽の膝に座ったまま、津軽は兄ちゃんの腹に腕を回したままで、俺は小さく溜め息。このサイケちゃん人形とそのママめ。 「用事?なにかお話?」 「………いや、なんでもねえ」 用事なら、ある。でもべつに本当に半分どうでもいい用事だし、なんかこれ以上2人の空気を壊したくなくて嘘をついた。きっと変なところで鋭い兄ちゃんは嘘に気付いてる。天然な津軽は気付いてないだろうが。 たとえ気付いていてもその先を突っ込んで聞かないのが兄だ。うん、ただ面倒くさいとか気付いてないとかもあるだろうけど。 「そうなの?じゃあさらに珍しいねっ」 「うん、デリ雄はこの頃日々也にべったりだからな」 「そんな事ねえよ」 「そんな事あるある!デリックは日々也くんにぞっこんだからねえ」 「いや、日々也だってデリックにぞっこんだろう」 「そっか!2人とも仲良しさんだもんね!」 せっかくいちゃつけるように用事黙ってたのに俺達の話をし始める2人に呆れる。と、同時に羞恥。2人は楽しいかもしれないが人に自分達の話をされるのには恥ずかしさを感じる。 なんだか頬が熱いからきっと顔は赤くなってるんだろう。それに更に恥ずかしくなって、ぐっと息詰まった俺に気付いた兄ちゃんが薄く笑った。ちくしょう微笑むな。 「デリックはかわいいねえ」 「ああ。」 「日々也くんと仲良くし続けられたらいいねえ」 「ああ。」 夫婦みたいな会話すんな。まるで熟年夫婦だ。まあ熟年夫婦はあんな風にいちゃいちゃしないんだかんな。ああ、情けない。 え、何が情けないって?…もちろん、何も言えなくなっているこの俺がだよ! 仲よしはよいことです。 「そういや兄ちゃん何話してたんだ?」 「んー?津軽の呼び方大全集!」 「なんだそりゃ。まあようするにあだ名考えてたの?」 「うんっ!いっぱいできたよ!」 「へえ。たとえば?」 「つがちゃんとかつーくんとかがっちゃんとか!」 (がっちゃん…!?) ―――――― なんだかどんどん脱線していった話になりました´ρ` ぐだぐだですみません…´` まともなサイ津これが初めてとか!すみません!^ρ^ |