生徒臨→先生静 | ナノ





俺はあの教師を、新たな学年の始まる始業式に、あの古びた壇上で一目見てから好きになった。新米ならではの、型に嵌まりながらも何処か抜けているような定番の言葉。受け持つ教科、自己紹介。どこも在り来りで、可笑しくなどなかった。まあ、唯一可笑しいといえば――。


「初っ端から金髪ってすごいよねえ、平和島先生って」

「…やっぱりそうだよね」


新羅が面白そうに口角をあげ、俺は同意した。クラスの女子に可愛い顔をしていると早速目を付けられた新羅は、今ではそれから逃げるようにいつも俺の横にいる。
まあ実際、新羅からしたら女子にどう見られようがどうでもいいんだろうけど。
只今、授業の合間の10分休憩。テストが近いからか、教卓の周りには先程の授業の教師を囲む生徒の群れが、やんやかんやと教科書を手に呻いていた。
教科は数学。高1の最初のテストなんてそんなに難しくないだろうに、皆同じく真剣に悩んでいるから面白い。
漸く、数人が納得したのかしていないのか、ぞろぞろと自席に戻っていった。それでも群れはなくならない。まだまだ、沢山いる。


「…あ、やっと見えた」


減った群れの間から頭一つ分高い金色が見えて、何となく満足感を得た。
俺の好きな人は、7歳年上の教師。初めて見た壇上では茶色だった短髪も、今では金色に変わっていた、教師とは思えない男。
そう、俺は、あの新米教師に恋をしている。





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