「なあ臨也」 「なあに」 「おれ、お前のしゃべりかた好きだ」 「へえ」 「べつに、おれがマネしたいってほどじゃないけど、」 「ないんだ」 「うん。でも、好き」 そういって俺の横で笑う子供は、生れつきなのか色素の薄い焦げ茶色をした髪の毛が綺麗だった。俺は溜息をつく。それに気付いた子供は幼さの塊の表情のまま、こちらを向いた。俺はまた溜息をつく。 「シズちゃんさあ…」 「?うん」 「なんでそんなに可愛いの」 そっと掌をその柔らかい頬に添えれば、今一解らないとでも言うように擽ったそうにはにかんだ。 一度出てしまった手はもう戻せない。まるで子供に糸で引っ張られているかのように、俺の手は白い頬から離れない。 壊したい、綺麗な笑顔も、瞳も、心も。 俺の手の先から滲み出さんとしている悪意と狂気と好奇心に気付きもしない子供は、未だ俺の手の中にいる。 |