※途中で切れます ※臨也お誕生日おめでとう!!!いつまでも大好きです新宿代表のぼっち様^^ 「……あー」 今日は、臨也が何だかイライラしている。 「………」 サイケを見てるフリをして、その向こうを見ると、乱暴に頭をかく臨也の姿。サイケや日々也の元になった、綺麗な顔は苛立ちからかくしゃりと歪められていて、思わず直視出来ない位に背筋が緊張する。 恐らく静雄が原因だろう。臨也があそこまで苛立つなんて、静雄関係以外見たことがないから。 「…………」 あ、今小さく舌打ちした。 嫌だな、やっぱり誰かが機嫌わるいっていうのは、色々な事の気が滅入る。 それに、今日は、――誕生日なのに。 臨也本人が気付いているかはわからないけれど、今日は、臨也の誕生日なのに。 なのに、イライラなんてしていたら。 「ねえ津軽」 不意に視線をサイケに戻す。サイケは先程とかわらず、黙々と絵を描いていた。 器用な指先で描かれる絵は、いつものサイケからは予想が出来ないくらい、綺麗で、落ち着いている。 サイケの指が、持っている色鉛筆が、さらさらと動く。俺はただただそれに見惚れながらサイケの次の言葉を待った。 「シズくん、今日風邪引いたみたい」 ――成る程。 「それでね、臨也くんとしても、すぐ飛んで行きたいんだけど、朝からずーっとお見舞いの人がいるんだって」 サイケの指が黄色の色鉛筆を置いて、橙色の色鉛筆を取った。紙と柔らかい芯が擦れる乾いた音の中で黄色の上にうっすらと乗せられた橙色が、また綺麗だ。 「例えば、朝は首無しライダーさんが。その後は、臨也くん達の後輩の帝人くんや杏里ちゃん。あとお仕事の人に、次いで茜ちゃんに幽くん。幽くんがね、また長居みたい」 だから、まだ臨也くんシズくんに会えてないみたいなんだ。 そう最後に付け加えるなり、サイケは黙ってしまった。 サイケ越しに見える臨也は相変わらず機嫌が悪そうで、今改めて見るとそれに加えてなんだか寂しそうで。 何か出来ないだろうか、そう思いながら視線を再びサイケの手元に戻す。 *** やってしまった。 今日はあいつの誕生日だっていうのに、やってしまった。 「兄さん、お粥出来たよ」 「……わりぃ…」 ゴールデンウィークの今日、俺は風邪を引いてしまった。 今日は、朝セルティと会って、新羅とセルティの2人からの誕生日プレゼントを受け取って、そのまま新宿に向かう予定だった。 でも、それも、新宿に行った後俺がこっそり考えた予定も、全部これでパア、白紙に戻った。 セルティは無事臨也にプレゼントを渡したらしい。その時に俺が風邪を引いたとも伝えたみたいだ。いつも本当にセルティには世話になっていて、今回は本当に有り難くて、思わずお返しで頭が一杯になってしまう。 一口、幽のお粥を食べる。おいしい。 一人暮らしで、しかも悪い事をしてしまったと凹んでいた俺には、わざわざ出向いてくれた弟のお粥はおいしすぎるくらい心に沁みた。 幽は仕事がある、と2時間くらいで帰っていった。家を出る際、凄く心配そうに「なにかあったらすぐ連絡してね、すぐに行くから」なんて言われてしまって、思わず笑ってしまった。 一人になった部屋。午前中に知り合いは大抵来てくれた。 セルティに新羅(のコメント)、竜ヶ…峰に園原、トムさんにヴァローナ、茜、幽。門田は夜来てくれるってメールが来てた。 俺の為に皆がわざわざ来てくれる、気を遣ってくれる。 嬉しい、こんな事滅多になくて、元々こういう事に慣れていない俺の涙腺は、今にも緩んで崩れそうだったりする。 (………でも、) あいつは、祝って貰っただろうか。 あいつの家にはサイケ達がいる。そこはまず安心だ。 (………はあ) 思わず溜息がでる。祝いたかった、当日中に、直接。 祝いのメールも詫びのメールも、朝のうちに送った。返事も、ちゃんときた。 でも、やっぱり。 目を閉じる。なんだか瞼の裏が眩しく感じて、疲れでも溜まっているのかと心身を落ち着ける。 プレゼントだって、あいつに言う言葉だって決めていた。女々しいな、と自分をいくら嘲笑っても、悔しいのは変わらないし、申し訳ない気持ちも治まらない。 不意に誰かに名前を呼ばれた気がして、とうとう幻聴でも聞くようになったかと、うっすらと瞼を上げた。 いつもの天井が見えると思ったら、そこには、俺の顔。 「静雄」 「………は、」 目を開けると、俺の視界をピンクの霧やら靄やらが埋め尽くしていて、その真ん中には、俺ではなく――デリックが浮いていた。 「……デリック…?」 「お見舞いにきたぜ」 笑ったデリックは、周りに立ち込めているピンクの靄から上半身だけを出して――いや、生やしていた。 一体何が起きているかわからないまま、思わず半身を起こす。身体全体が痛みを訴えても、デリックが起きるのを制しても、無理矢理に起き上がった。 高さを持った頭がクラクラして、気持ちが悪かったが、デリックは諦めたのか小さく笑っていて、俺も笑みをつくる。 気付いたら両手を差し延べされていて、頬に触れられた。 その手が、デリック自身が、光のように明るく、はかなげに発光していて、更には朧げで。 「やっぱ、静雄がいねえと話になんなくてさ」 俺の頬を触っている両手が一層眩しくなる。 訳のわからない事も、言動も、臨也やこいつらと一緒にいて、慣れたつもりだった。 でも、これについては流石に全く何もわからない。 「だから、臨也の為にも早く会ってやってくれよ」 そう言われて、いきなり冷たくなった手に驚いて肩を跳ねさせると、デリックも驚いたようにほんのり目を見開いた。 「……流石、静雄」 ぽつり、呟かれた気がして改めて逸れた視線をデリックに戻すと、そこにはもうデリックはいなかった。 「…………幻覚、?」 きょろきょろと周りを見回す。しかし、デリックもあのピンクの靄も、全て綺麗に消え失せていた。 俺病気なのかな、なんてもう一度布団に背を預けたところで、ようやく気付いた。 頭が、全く痛くない。少し動かしただけで痛かった頭が、先程周りを見回した時も、今布団に背をつけた時も、全く痛くなかった。 そして、思い出す。最初にきたセルティに「酷い鼻声だな」と言われていた事を。 先程まで重かった身体が、軽くなっている事を。 「…………」 原因は、あいつしかいない。 今しがたいきなり現れて、現実味の全くないまま消えていった、臨也の家の住民。 「………あいつ、妖精かなんかだったのかよ」  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ここまでです^▽^ 書いていくうちに派生がでしゃばりすぎて臨誕文じゃないなあと思えてきまして… 因みにこの後は、連絡もいれずに静雄は臨也の家にいき、臨也びっくりしてハッピーバースデーです。 最後にサイケの絵が完成して、それが臨也と静雄の絵(すごい綺麗)っていう描写も書きたかった。んですが断念! |