more 06/08 17:41 ・来神 ・つんつん臨也→いきなりどうした臨也 ・普通な静雄→ただの鈍い静雄 ・場所は教室 「悪いな」 久しぶりに、シズちゃんの傷の手当をした。いつもなら新羅の役割なんだけど、今日は同居人がどうとかでさっさか帰ってしまったんだ。 「相変わらず器用だよな…」 シズちゃんの目が俺の手当した膝を眺める。俺の中でも綺麗にいったと自画自賛していたが、どうやらシズちゃんも同じような事を思ったようで。膝小僧に貼付けた大きな絆創膏を、俺より長い綺麗な指が触れる。 ちくしょう、シズちゃんに褒められたって嬉しくないし。特に隠す訳でもなく思いっ切り睨んでやる。琥珀色がほんのちょっと見開いて、次いで眉間に皺が寄る様子を、俺はきっと楽しそうに眺めた。 はあ、実際は楽しくなんかない。シズちゃんと会話するのだって、手当するのだって、触れるのだって、事実嫌なんだ。 『ねえ、臨也って何でそんなにツンツンして―――』 新羅の言葉を脳が反芻して、内心で誰に吐く訳でもなく溜息を零した。 「おい臨也?」 シズちゃんが俺の頭に手をおいた。何だお前は父親か、ドタチンなのか。頭の中がぐるぐるして、俺は笑顔をつくれないまま、無意識に俯かせていた視線を浮かせた。 眉間が寄ったままのシズちゃんと目が合う。 「馬鹿だろ」 気付いたら、言葉が出ていた。 「は?」 「シズちゃんって、馬鹿だろ」 「…んだと?喧嘩売ってんのか?」 苛立ちが前面に押し出された視線が俺の目を貫いて、俺は珍しく動揺したのか、何も考えずに脳裏を過ぎった言葉を縋るように吐き出した。きっと咄嗟だったんだと思う。 「反則だ」 「はあ?…お前いい加減会話しやが」 「ッそんなに可愛いとか反則だろっ!!」 「…………は」 「癪だ!シズちゃんが可愛いだなんて、絶対に可笑しい!俺は、俺は……っ」 「い、いざ……?」 「…俺はっ、認めない!!!」 後は、無我夢中で走った。 本当に無我夢中だった。頭の中は真っ白で、あとはそれにちょっとアイボリーが加わった程度。 シズちゃんの声が背中にかかったとしても、止まる余裕が微塵もない俺は勢いよく教室を飛び出した。行く先も考えず駆けた俺の足音が、廊下を包んでいた静寂にやたら響いた事は、何故か鮮明に覚えている。 「……何だ、あいつ」 さあて、残ったシズちゃんは一体何を思ったんだろうか。あはは考えたくもないや! これが、後に俺の黒歴史となるのは言うまでもない。 |