「あー良い天気…!!」


俺は庭に出て思いっ切り伸びる。
…しっかし蒼い空だな。まるで綰哉みたいじゃねえか、胸糞悪い。

綰哉の耳に入れば絶対殺されるようなことを心の中で思いながら、何もすることもないからただ空を見上げる。


―――すると、視界に丸い物が入りこんできた。



「っと…何だ?」


それを受け止めふと視線を落とすと、そこにはいつか見た見覚えのある鮮やかな手まり。



「―――これは」

その時、


「あぶないぃい!!」

「ん?」


声のする方を振り向くと



「っおわあ!!?」


何かが俺の上に降ってきた。
つか…落ちてきたって言う方が正しいのか?



「いっつつ…」


背中にずっしりとした重みを感じる。おいおい、誰だよこんな朝っぱらから。



「あれ…?おにーさん、もしかして――」


その声になんとか首を動かしてそれを見れば、



「あ…兎束!!」



以前会った、俺より幼く見える…男?女?まあ、性別は良いとして、兎束そのものだった。

何故ここにいるのか、と尋ねようとすれば遮られる。



「うお!?警部!!!」


寝起きにしては機嫌が良いな…。正午近くになって漸く綰哉が起きてきた。



「綰哉―!」

「おれの名前覚えててくれたんだな!」


綰哉は嬉しそうにそう言う。
…良かったじゃねえか。

少しその様子を見てほのぼのしていたら、俺の背にかかる重みが増した。



「うぐ…っておい。綰哉、お前何してんだ」



どうやら綰哉が兎束の真似をして俺の背に乗っかってきたらしい。



「何って…楽しそうだったから?」

「楽しそうだったから?…じゃねぇわ。しかも何で疑問形なんだ。兎束も綰哉もさっさと降りろ!!」



本当にお前は俺を何だと思ってるんだ…。

漸く身体を起こすことができた。兎束は兎束で「やっぱり似てるなあ」と嬉しそうに言っている。

…一体何に似てるっていうんだ?

さっき拾った手まりの汚れを綺麗に払いながら、兎束に渡す。



「ほら」

「んむ!ありがと、天哉!!」


手まりを笑顔で受け取りながらそう返される。不意に触れた手は、やはり冷たい。



(ボクは人間じゃないから体温ないよー)


前に聞いた言葉は今でもはっきりと覚えている。
…人間じゃないってどういうことだよ。
それなら今此処にいる“お前”は、何だっていうんだ?



「ねーねー、ここって何処なの?」


頭の中で考えていると、兎束が裾を引っ張りながら聞いてくる。



「あぁ、ここは街のはずれだ」

「む、まち?」


兎束は街を知らないらしい。

――そういやあ、前も城って言ってたし、着てる物も異なる。



「…つかお前何処から入って来たんだ?」


俺は率直な疑問を投げかける。
…空から降ってきたなんて信じたくねえし。



「何処って…吉法の城?」

「いや、来た場所じゃなくて…お前いきなり現れただろ?」

「え!兎束は超能力者なのか!?」



おい、綰哉。俺は一応大切な話をして…っておい兎束、お前も一緒になってはしゃぐな!


「ちょーのーりょくしゃ?何それー?」


あははーと言いながら綰哉とはしゃぐ兎束は、年相応の笑顔で、やはりあの言葉は信じられなかった。



「超能力者ってのは…こう…」


綰哉は説明する為だけに“力”を使おうとする。



「綰哉!!」

「あ…ごめん」


兎束の頭の上には沢山疑問符が並んでいた。



「む、どうかしたのー?」

「…お前にはお前の事情があるように、俺らには俺らの事情があんだよ」



――俺らが周囲から忌み嫌われる理由である“力”という事情が。

せっかく綰哉に出来た繋がりを、俺は簡単に消したくなかったのだ。



「ふーん…ま、良いや!」


兎束はそれ以上詮索してこようとはしなかった。



「よし!じゃあ一緒に街にでも行かない?」


綰哉が笑顔で聞き返すけど、どうやらそれは叶わないらしい。



「気持ちは嬉しいけど…もう帰らなきゃ」

兎束の身体が段々透けていく。
…随分と早いんだな。



「っじゃあまた今度絶対遊ぼうな!?」



綰哉は必死に兎束に言う。



「…んむ!もちろん!」

「兎束、」

「む、なーに?天哉」

「お前が!人間じゃねえって言っても、お前は今息もしてるし、話してる。そんなやつを人間以外だと思えるかバーカ」



俺がそう言うと兎束は目を真ん丸くさせる。


「それに――お前が何であろうと、俺らのダチだ」

「…だち?」


俺が言い終えると「天哉もたまには良い事言うんじゃん」と綰哉が言った。

…たまに、は余計だっつーの。



「じゃ、またな?兎束!!」

「元気でなー」

「んむ、二人とも達者でー」


兎束はその言葉を言い終えると同時に俺らの前から姿を消した。


俺らは兎束に出逢ったことで間違いなく、何かが変わり始めていた。

あいつにまた会えるなら、周りに何をされても、何を言われても大丈夫だと思える。



「…んま、進むしかねえよな!」


俺はもう一度大きく伸びて、空を見上げる。

…もしかしたら、またあいつが降ってくるんじゃないかという淡い期待を抱きながら。




(何ぶつぶつ言ってるの天哉。まさか流行りの病とか?)
(んなわけねーわアホが…っうー、腹減った)
(今日の飯当番、天哉だけど)


(奇跡、かなー)
(あ!何処に行ってたんだよ、兎束!!)
(蘭ー、だちって何?)


――――――――――――――――――――

鷲さまへ!!

韓国のりめっさうめぇ←
無事に旅行から帰国なされたということで、爆弾どーん←
やらかしましたー、兎束×てんやわんや。天哉視点で書かせていただきました。
や、思いの外楽しくなりすぎましたww
兎束可愛いよ兎束。
天哉は可哀想なポジション、あってます(キリッ)
兎束と綰哉の保護者的な…ってあれ、これどこかのオカンな忍(ry
長くなりすぎてすいません…!!
よろしければお持ち帰り下さい。





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