鮮やかな手まりを投げては取る。投げては取る。
ボクが一人で、落ち着ける時間。ここは静かで気持ちがいい。
今日は天気も良いし、ちょっと高めに手まりを投げてみた。青に映える、色彩。
両の手を大きく伸ばして、取ろうとした、その時。


「うわあ?!」


どすん!と何かが落ちる音で、思わず飛びのいた。
手まりは地面に落ちて、跳ねながら遠ざかっていく。あーあ、汚れちゃったかな。
それを追っていくと、座り込んだ男が、ボクに手まりを差し出した。
短い羽織に、赤い花のついた帽子。全体的に、赤基調。


「これ、お前の?」

「んむ、ありがとおにーさん!でもさあ、なんでここにいるの?ここ、吉法の城だよー?」

「きっぽう?いい知らせなんてどこにあんのさ」


赤い男の後ろから顔を出すのは、青を纏った男で。
なんか、吉法を勘違いしてるみたい。それは”吉報”だよね。面白い人ー。
手まりを受け取って、周りを見回す。誰もこの二人に気づいてないみたい……それはそれで問題な気がするけど。
立ち上がって砂とか汚れを払う赤いほうに笑いかける。


「ボクは兎束。ねえおにーさん達、名前はー?」

「兎束、ね。俺は天哉」

「おれが綰哉。とつか、とつか……じゃあ警部って呼ぶわ」

「けーぶ?」


首を傾げるボクを放って、天哉が綰哉に何だか文句言ってた。文句っていうか、戸惑ってるのかなー?まあいっか。
でも流石に放置されるのは癪だから、二人の裾を引っ張って気を引いた。
うわあ、二人から見下ろされてるよー……仕方ないけどさあ。


「ねえ、天哉も綰哉も、なんで此処にいるの?此処は城の一番奥なんだけどー」

「し、城ぉ?!おいおい、勘弁してくれよ……綰哉、どうする?」

「取り合えず天哉が死に物狂いでおれを逃がせばいいんじゃない?」

「お前は俺を何だと思ってるんだ」


冗談だってー、と笑う綰哉の表情に悪びれた感じは無い。
あ、このやり取り、佐吉と竹千代に似てるんだ。それよりずーっと穏やかで平和だけど。
不意に、綰哉の手がボクに触れた。ああ、やっぱり暖かい。


「警部は体温低いねー、ドラマでは死体役なの?」

「綰哉!お前は縁起でもないこと言うなよ!」

「んむ?”どらま”っていうのはわからないけど、ボクは人間じゃないから体温ないよー。びっくりした?」


にこ、と笑ってみせると、二人の表情が少しだけ、翳った。
あーあ、本当にボクの周りにはお人よしが多いよねえ。ボクとしては、吉法みたいなのが一番楽なんだけどなー。
茫然自失、とまではいかないけど、動かない二人の裾をまた引っ張ろうと伸ばした手は、掴めずに空を切った。
唐突にわかった。もう、時間みたい。


「天哉、綰哉、よかったねー。きっと帰れるよ」

「そ、う……なのか?」

「きっと、ってのが気になるけど。ま、元気でな、警部」

「んむ、人間じゃないから元気も何も無いのに……そっちこそ、だよ。またねー、二人とも」

「…おう。じゃあな、兎束」


天哉のその言葉を最後に、二人の姿は空気に溶けた。
手渡された手まりや触れられた場所にさえ、温もりは残ってない。けど、それで良いんだと思う。
あの二人はどう見たって乱世には不釣合いだもんねー。


「……兎束、何を笑っておるか」

「んむ?んー…面白いこともあるんだなあ、って」


吉法の言葉にそう返すと、興味が無さそうに顔を逸らされた。む、聞いたのは吉法じゃないか。
歩き出したその背を追いながら、手の中の手まりに視線を落とした。
鮮やかな赤と青。秩序無く折り重なる文様は、まさに”てんやわんや”で。
二人を思い出して、ひっそりと笑った。








(はっくしゅ!)
(天哉は風邪か?よし、隔離)
(違うっての!何でそう綰哉は…!!)

(ねえ、吉法。願ってればまた奇跡はおこるかなー?)
(……是非も無し。奇跡など、ただの妄想に過ぎぬわ)

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「てんやわんや」の邑炉さまに捧げさせていただきます…!!
織田軍中編主を描いていただいたので、お礼に…というか、鳩螺が楽しんだだけですねスイマセン。
天哉くんと綰哉くんの性格などは想像で創造です。違ってたらすいません。
「警部」呼びな理由は兎束→とつか→戸津川→警部です。西村京太郎さんのシリーズですすいません。
よろしければお持ち帰りください…!!


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きゃっふぅううぅ!!←
鷲さま本当に…っ!本当に頂いてもよろしいんです…か!?
夢主を描いてこんな素晴らしいSSを頂けるとは…夢にも見ませんでした!おっとよだれg(汚い

すんごくにまにまして、にまにま止まりませんこれ。あ、ちょやべ(落ち着け

あの少ない情報で想像で創造して書いて頂けて幸せ\(^O^)/
あ、因みにうちの子もお持ち帰り自由ですうふふ←
煮るなり焼くなりお好きにどうぞ^^

よっしゃ、パワー貰った!!
本当にありがとうございました






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