08



あれから大体1時間は経ったと思われます。前田慶次と運命的な出会い方をして、一緒に武蔵を捜してくれるってことになって…


「ほら!アンタも踊って踊って!!」

『いや、ちょ、恥ずかしすぎるううう!!!』


ずっと踊ってます。むしろ踊りながら京の街中散策してるって言った方が正しいかもしれないです。


『ちょっと慶次!!さっきから変な技使うのやめてくれないかな!?』

「技?なんのことだい?」


そう、慶次が踊りだすと私の身体も勝手に動いて踊ってしまうんですよね、不思議なことに。しかも本人はわざとやってるわけじゃないからなおさらたちが悪くて困っております。


「ほらほら!そんな顔しないで楽しもうぜ?」

『周りの人の目ちっとは気にしてくださいよおおおおお!!』


さっきから私たち二人を見てクスクス笑ってる人が気になって仕方ない!まだ慶次は知り合い多くて良いかもしれないけど私明らか頭おかしな人でしょ!!!


『ちょっとおお!!まじでやめてもらえませんかね!?』

「まあまあ、落ち着いて!よく周り見てごらんよ」

『は―――』


恥ずかしさで周りなんか気にしている暇もなかった私が改めて周りを見てみると、街の人たちが一緒になって踊っていた。


『あれ…おっかしいな…寝ぼけてんのかな?』

「遼は寝ぼけてないよ。俺が踊ってると街のみんなは一緒になって踊りだすんだ!」


ああー、だから恥ずかしくないぞと、羞恥心なんか捨てて踊っちまえよと。ふむふむなるほどねえ…



『…って納得すると思ったかKY!!!!』

「うわあ!?何すんだよ、遼!」

『あっさり避けてんじゃないよKY!』

「KYってなんなんだよ!?」


下からアッパーなるものをかましてやろうと試みましたが、華麗に避けられてしまいました。悔しい…!!


『これが人捜しの何に繋がるんですかね!?』

「一緒に踊ってたらみんな寄ってくるだろ?それを利用して…」

『混ざってこないよ、京の人じゃないんだからいくらなんでも!』


あいつなら私を指差して「だっせえぞ、遼!!」って言って笑い転げると思うしね、うん。


「まあでもさ、今あるこの時をみーんなで楽しまなきゃ!」

『…それも一理あるね』

「よし、みんなで踊るぞ!」


「おっ、良いねー慶ちゃん!」「やっぱり慶ちゃんがいると楽しいねえ」なんて街の人たちが慶次の一言によって沢山集まってくる。


「じゃあ、一仕事しますか!!」

『え、』


慶次が武器を構えて大きく一振りすると、どこからともなくでてきた桜の花びらが風と共に舞った。


「さあ、祭りだ祭りだーあ!!」


その声を合図に人々は踊りだす。


『…………』

「ん?どうしたんだい、遼。口が開いてるよ」

『いや…すごい特技だなって思ったのと綺麗だなあなんて』


素直に感想を述べると、慶次はニッと笑って「だろ?」と嬉しそうに言ってきた。本当に桜吹雪とか似合うなーなんて思った。


『あ、言っとくけど慶次が綺麗なわけじゃないからね』

「わかってるってそんなことー!遼の方が何倍も綺麗だしね!!」

『………』

「なっなんだよその目!」

『いやあ、クサイ台詞吐くなあって思って』

「そんな目で見るなよ!悲しくなるだろ!?」


慶次をいじるのは楽しいです。でもたまにサラっと言うクサイ台詞だけは勘弁してほしいです。鳥肌がとまらないんで。あ、寒気も。


「なあ、全部口から出てるよ」

『ハッ…!不覚…だった…』

「心の中では俺のことそうやって思ってるんだな…わかったよ…」


慶次がいじけました。これは大変そうです。めんどくさいなあ…


『よし、ヨイショしてモチベーションあげてやるか』

「モチベーションが何かは知らないけど明らか良いことは言ってないっていうのは分かったよ…!」

『あ、ごめん』



(もう俺の扱いって…)
(ごめんね、ほぼ空気だから気がゆるんじゃうんだよねー)
(俺にいろいろ失礼だって!!)


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