05 『…………』 あのぶんどる発言のあと、結局は結構なお金を所持していた宮本武蔵。行くぞ、って言われて連れてこられた所は着物やら戦闘着やら様々な種類の服を扱うお店。私がとりあえず唖然としていると、 「おーい、これ着ろ!」 なんて言いながら差し出してきたのは、 『あの…?』 「ん?おれさまと揃いのが着れて嬉しいだろ?」 『どこをどう判断してそう見えるんだろうか?』 宮本武蔵が着ている服。 まずさ、ありえなくね? 『ねえ、私一応女なんですけど…』 「は?なんだよー、うっかり男かと思っ…いっでえ!!!」 もうぼっこぼこにしてやろうかと思いましたよ。でも私、初対面の人にそんなことできるようなハート、持ち合わせてないし。なんてったってアイド…初対面だからね、うん。 「ジョーダンだよ、ジョーダン!!ほんとのはこっち!」 そう言って個室(きっと現代でいう試着室的なもの)を指さす。 『いやいやいや、私産まれてこのかた着物なんて着たことな、』 「大丈夫だって!!着つけてくれる人いるからさ」 さあ、行った行った!!!なんて言って私に着物を持たせて背中をぐいぐい押してくる。そんなこんなで冒頭にいたります。 『…………』 いやいやいや!! なんていうか…何が正解?いや、なんか似合ってるとか分からないしとりあえず苦しいし面白くもなんともないし、うっすら化粧もされて(現代とあんまり変わらない化粧で助かった)、誰コレ。この目の前に映ってるのって…私? 「おーい、まだかよ遼ー」 『は、え?いいいいや、もう少し待っててもらえますでしょうか』 ちょっと待て自分。何をこんなに緊張してるんだろうか。だって別に彼氏に見せるわけでもないじゃん。うん、彼氏ならこの緊張は理解できる。けど!!!いまから見せる相手って、なんでもなくね?初対面だし、別に恋愛感情もないし、なにこの変な緊張。 「…おっせーよ、遼!!!」 『え、』 すると、奴はがたがたと乱暴に襖を開けてこっちに乗り込んできた。 乗り込んでき、た…………ええええ? 『ちょ、えええぇ』 「お、なかなか似合うんだなーお前でも」 『おいおい待て待て、お前でもって失礼きわまりないぞ』 「おばちゃーん、これとさっき言ってたやつくれー」 『聞いてよおおぉお』 なんやかんやでかなりの量を買ってくれました。 「あ、それとこれはおれさまから!」 『え、』 宮本武蔵が私に差し出してきたのは、めっっっっっちゃ私好みの簪。もう長年連れ添ったかのよう。 「なんとなく遼に似合いそうだなーって思ってさっき買ってきてやった」 『おまっ、私の趣味理解してるよ…!!』 「こんな感じのが好きなのか、まあさすがおれさまだな!」 ああもう宮本武蔵可愛い。現金なやつだと思ってくれて結構よ! 「さーて、出発するか」 『おっしゃ!!』 こうして私と宮本武蔵は出会って、すぐに心を通じ合わせたのでした。 今思えば良い思い出です。現在進行形のお話ですがね! これから私たちは甲斐に向かいます。 (ねー、宮本武蔵。交通手段はー?) (あ?そんなん歩きと走りに決まってんだろ!) (ちょっ、ころすきか) (ぶっはは!!嘘だって!) 2011.1110 [しおりを挟む] |