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『お、おお……!!ここが、近江!』
さて、やってまいりました近江の地、ここには目的の長政さまがね、いるはずなんですけどね、この空気よ……


『めっちゃ静かじゃないですか?』
「……だよなあ」


そしてこの見覚えのあるステージ…もしかして:姉川蹂躙戦……とか?
いやいやいや、まさかそんな近江ついてしょっぱなから戦闘なんてねえ?あるはずないですよね!だってこのステージとにかく陣落とさないといけないじゃないですか


『と、とりあえず進んでみましょうか』
「そうだねえ!」
「遼、絶対おれさまたちから離れんじゃねーぞ」
『お、おおおおう!』


武蔵からの頼りがいのある言葉に驚いて変な返事になる。だって聞きました?「離れんじゃねーぞ」って!!ねえ!!武蔵なら「おれさまいっちばんのりー!」とか言って素早く駆けて行きそうなのに。



辺りの様子を窺いながら慎重に歩みを進めていく。なんとなくだけれど道は舗装されているようで、私にも優しい。さすが長政さま、やるな。しばらく歩くと、いつか見た最初の陣が現れる。


『お、おお……正義の、軍団……』

そこには武器を持った理の兵たちがいて、無性にウズウズしてくる。
(ああああ……なぎ倒してえ、ばっさばさ斬り倒していきたい……法螺貝さんいるからたくさん倒せるし……)
どうしても私はゲーム脳だった。



「んー、さすがにこの中に遼ちゃんを連れて行くわけに行かないしなあ……」

「おれさまにいい考えがある」

「『え……?』」


意外にも武蔵から“いい考え”が浮かぶなんて思ってもいなくて、慶次とハモった。武蔵はまず慶次に「遼を担げ」と言った。私がその言葉を理解するよりも早く、慶次は私のことを肩に担ぐ。


『ぎ、ギャアアアア!!た、高い!地面!遠い!!』

「遼ちゃん、ちょっとだけ我慢!な?」


悪い!と言わんばかりに片目をばっちし閉じてウインクしてくる慶次に、なんだかイラッとしてしまったのは内緒の話で。私と慶次は武蔵の次の言葉を待った。


「よし、慶次は絶対に遼守れよ!」

「う、うん、それはいいんだけど……」

「おれさまが全部の陣落としてきてやるからおまえらはなるべく敵を避けて安全にしてろ」

『何それ武蔵男前すぎなんだけど』


私はてっきり慶次に私を担がせて、敵の中に突っ込んでいくとばかり思っていたので少しだけ武蔵の発言にきゅんとくる。「じゃああとでな!」と言って走り出そうとする武蔵を引き止める。



「なんだよ」

『あの、ひとつお願いがあってだな』

「お願い?」


こんな時にこいつ何を言い出すんだみたいな表情の武蔵が目の前にいて、少し申し訳なくもなるけど私も真剣なのだ。それに気がついてくれたのか、「で?なに?」と武器を担ぎ直しながら武蔵は私に尋ねる。




『あのね―――青いつづらだけはひとっつも落とさずにぶっ壊してきて』









――――――――――――――――――――――






『本当に痛い全力でぶん殴りやがったあいつ……』



あの発言のあと、武蔵にげんこつで頭を思い切り殴られた私だった。こんなにか弱い乙女を殴るなんて!ひどすぎる!!頭をさすりながら、ぐちぐちと慶次に文句をたれる。青いつづらを全て回収してこれからの旅の資金にしないと、いい加減野宿とかやだよ私。またどの布団がいいかみんなで争いたいよ。アッ、みんなでって慶次くんはハブだったんでしたごめんね!!
慶次にそんな悪口めいたことを思っていたら、「うお?!」と焦る声が聞こえてきた。この風来坊、何かやらかしたのか……なんて思ってどうかしたのか、と聞いてみると



『ぐえっ……?!』

「ん?あ、ご、ごめん!!ちょいと走るよ!」



上下に揺れるたびに慶次のたくましい肩が私のお腹に食い込んで苦しい。なんなら食べたものがうおおおおあっぶねえ出るところだった!間一髪!!!


『慶次、これどこ向かってるの』

「武蔵と反対方向からまわって行こうかなと思ってね!」

『は?』



このひとは話を聞いていたのだろうか……。私がわざと大きくため息を吐くと、すごく動揺した様子で「え、な、何だい?気に障ることでもあった……?」と聞いてくる。武蔵は安全なところにいろと言っていたのに何故自ら危険に片足をつっこもうとするのか。風来坊め、ニートのくせに!いや、フリーター?



『こっち側ってだって、あれじゃないっけ、五本槍くんたちの……』

「五本槍……?」


「『あ……』」


慶次のせいで私の命の灯火が消されそうな予感がしますね!!慶次許さない絶対にだ。


(今からでも遅くないから逃げよう慶次くん)
(で、でももう自己紹介始まっちゃってるよ……)
(五本槍ィイイイイ!!!)
(くっそおおおおおお!!!)



2013.0825


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