12 『う…ぐ…』 「だから言ったろー?早く寝ろって…」 京から武蔵と一緒の馬に乗って華麗に出発して30分も経ってませんがとっても気持ち悪いです。理由はあれですね、夜遅くまで続いた武蔵との死闘(ただの枕投げ)により少ししか睡眠時間取れなかったのにプラスして武蔵のいびきやら寝相の悪さやらで快眠できなかったことにあります。あれ、これって全部武蔵のせいじゃね? 「弱っちいなあ、遼は」 『お前のせいだよバアアァアアカ!!!!うっ…』 「あーあー遼ちゃん!あんまり騒いだらもっと気持ち悪くなっちゃうから大人しくしてなよ!」 あーだめだ最悪だ…車酔いみたいな気持ち悪さだ…朝ごはんがリバースされたらもうお馬さんごめんね許してね。思わず後ろにいる武蔵のお腹に体を預けてみる。お、寝心地いいかもしれないぞ人肌あったかい… 「ん?なんだ遼ー」 『落ちないように支えててもらえませんかね…寝たい』 「まあ頑張ってみるけど落ちたら拾わずに置いてくからな」 『おい』 「嘘だよばーか」 おお…いっつもより武蔵が優しい気がする…馬鹿って言われてイラっとするのが通常の私だけど優しい馬鹿だったね今の。これは安心して寝れそうだ…そう思いながら私は眠りに落ちた。 『ん…』 「んお、起きたか」 「おはよう遼ちゃん」 馬に揺られてる感覚はなくて、枕みたいなものの感触がして目を覚ますと目の前にはあぐらをかいている慶次の足。あれ、武蔵は?なんて思ってると上から「思ってたよりおめー軽いな」なんて奴の声が聞こえるからその方向に頭を向けると、 『うん?』 「あ?なんだよ」 『……』 あれれ、これってなんていうかもしかしてもしかしなくても:膝枕 膝…枕…?武蔵の?膝っていうか太ももに?私の頭が? 『おっぎゃあああああああ!!?!』 「うっわあっぶねえ!!いきなり起き上がるなよ頭ぶっけるとこだっただろーが!!」 膝枕という状況を理解した途端、私の中の乙女な部分がひょっこり顔を出してきたので思わず叫んで飛び起きてしまった。私の顔を覗き込んでいた武蔵はそれを間一髪避けて頭同士がぶつかるのを防いでくれました。危ない危ない…… 『武蔵に……膝枕されていたなんてそんな……』 「なんだよ、文句あんのか」 『いや、全然ないんだけどまさかの展開すぎて私は…』 本当にまれに見れる武蔵の優しい部分に私はとっても驚きを隠せない。なんといいますか、武蔵っておれさまが中心!みたいなイメージあったんですよね、それでも好きなんですけど!そんな人が出会って数日の私に膝枕をしてくれるまでに…フホォ…感動的だなあ… 『武蔵すき』 「そうか、おれさまも遼のこと好きだぜ」 『恋愛感情とかでは見れないけど最高に好きだわあ』 「見られてたらぶん殴るけどなー」 そう、恋愛感情の好きではないけど友達として馬鹿やってるととっても楽しいから武蔵は好きなんだよねえ。なんだか場に合わない甘い感じの雰囲気の中漂う悲しい雰囲気…そっと二人で目を向けると、案の定慶次が体育座りで鼻をすすっていた。あ、またやっちゃったよこれ。 『慶次…ごめん』 「いいんだよ俺なんか…放っておいて二人の世界を楽しめばいいさ…」 「悪かったって風来坊、別におまえの言う色恋沙汰になんかならねーし、遼とは」 「ぐすっ…」 あーあ、泣いちゃったよこの大男…いい年の男が泣くなんてそんなみっともない…アッ、今の全部口から出てたみたい!もっと泣いちゃったぜ慶次ごめーん。 「さ、休憩は終わりにしてさっさと近江に向かおうぜ」 『そうだね!ほら慶次、行くぞ!!』 「いいんだ俺は風になるんだ…」 『何言ってんの慶次頭大丈夫だろうか』 休憩を終了してまた馬に乗る。いい加減酔わなきゃいいなあ、まあよったらまた武蔵に寄りかかって寝ればいいのか。そんなことを考えながらよく晴れた青空を見ていた。 (何空ばっか見てんだー?) (なんか晴れすぎてて気持ち悪いなって思ってさー、慶次、桜!) (俺ってなんなの桜出すために一緒に旅してるの?ねえ!!) (慶次がいなかったらこんなすんなり旅できてないよ大丈夫) (うっ…) (あーあ、遼泣かせたー) 2013.0117 [しおりを挟む] |