09



『ぶっはあぁああ…!楽しかったー!』

「いやぁ、久々に良い汗かいたよ!」


お祭りのどんちゃん騒ぎが冷めやらぬ京の街。近くにあった団子屋さんで一息つくことになった。


「慶次はん、お団子おまちどおさまー」

「おっ、ありがとよ!!今日も相変わらず美人だねぇ!」

「いややわぁ、褒めたって何にも出てきまへんえ?」


…正直にね、申すよ私。あんね、さっきから慶次は街の女の子を見かけてはこんな会話の繰り返しを始めてもう…まじお前タラシかって!!!!反吐でちゃうわよ!


「なー、遼はみたらしと三色団子どっちが良い?」

『みたらしに決まってるでしょ!察してよ!!』

「えっ、ちょっと何で怒ってるんだい?」

『っあぁあ゛ああああ!!鈍感かって!もう一回言うよ?鈍感かって!!!!』

「落ち着きなよ、遼ー。お腹減ってるからぷりぷりしてんのかい?」

『私はエビか!?あぁん!!!?』


ヤバイ、こいつの空気ヤバイまじで。なんか…もってかれるよ?下手したら吸い込まれて大変なことになるよこれ絶対。


『もう!!慶次の団子寄越しなさい!』

「ん?ほら、」

『…………………』

「あれ?食べないのかい?」


いやいやちょっと待ていや待ってくださいよ。


『……団子寄越しなさいって』

「だからほらって」

『は?』


慶次は一向に団子を離す気配がありません。何でよ、寄越しなさいって言ってるでしょって。


「ほーら!!」

『えっ、』


慶次は私の口の前に団子を差し出します。えっとちょっと待って本当に意味がわからないよ私。


「早く口あけなよ」

『…は?自分で食べれるから良いって』


なんなん、子ども扱いですかてめぇこら。私もう高校ラストよ、大人の階段登ってるんだよ。


「あーもう!はい、あーん」

『あー………!!!?』

「よし、やっと食ったな!」


ちっちくしょう、コイツ…!!人の心理わかってらっしゃる…!あーんって言われるとつい体があぁああ!!


「うまいだろ?」

『おー、うん…この団子も美味しいね!』

「ここの茶屋の団子はどれもうまいんだよなー!」


あー、まったりしてる。時間の流れ緩やかだなあ…ほのぼのしちゃうよ、久しぶりに。
なーんかでも…大事なこと忘れてるような…?なんだっけ…ぬ…ぬじゃないか、む…む…………む?


『ああぁああああ武蔵い゛いぃい!』

「うっわ!!びっくりしたあ…!どうしたんだい、いきなり叫んで?」

『違うんだよ、慶次くん!私たちは今こんなことしてる場合じゃないんだよ!!』


そうだよ!慶次とまったりほのぼのとお祭り楽しむためにここに来たわけじゃないんだって!


『あんな、私たち団子食ってる場合じゃなくてね、私の連れを探さねばならないんですよ』

「あー、そういえばそうだったねぇ」

『呑気だなーおい』


慶次に言うだけ言ったって無駄だね、うん。


『よーし、行くぞ慶次ーい』

「あれ、ちょっと遼?掴むとこおかしくないかい?」

『おかしくないおかしくなーい』


私は慶次の髪を掴んで引っ張って歩きだす。だって行こうって言っても埒あかないし、だったら実力行使だよねー。



(さ、しゃきしゃき探すぞー!!)
(ちょ、遼!!!!行くから!行くから手離しいてててて!!)



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