『き、緊急事態です』

「如何なされた?遼どの」

『……一旦みなさんをここに、集めて下さい。話があります』












――――――



「…で?話ってなんだ、Honey」

『えー、実は元親が…』




私はそこで言葉に詰まった。
今ここで起こったことを言ってしまえば、次はまた別の誰かが―――




「遼ちゃん、代わりに俺様が」




佐助が気づいてくれて、代わってくれた。




「鬼の旦那の身体が透けてるんだよねえ」





その場の空気が凍ったみたいだった。
時計の針の音が嫌なくらい耳につく。




「な、何を言うておる。そんな馬鹿なこと――」



政宗は明るく、いつもの調子で返すが動揺を隠せていない。



「Ha!!随分と笑えねえJokeだなぁ?お猿さんよお」



伊達がそう言ったとき、





「猿飛の言ってることは本当のことだぜ」

『も、元親!』



元親が現れた。
さっきよりも透けてきた気がする。




「な…!?」
「なんと…!!!」




その場にいた全員が驚いていた。
唖然としており、さっきの勢いはなくなっている。




「…な?今じゃ俺は人も物も何も触れねえ」



もう“近い”と悟っているのか、複雑な表情をしている。




「じゃあまさか…某たちも、もうじき…?」



あれだけ帰りたいと、戻りたいと言っていたのに、いざそうなると何故かみんなはそれとは反対の表情になる。




『み、みんな?ねえ、矛盾してるよ?あれだけ元の世界に戻りたいって言ってたじゃな―――』

「嫌でござる!!」




幸村が大きな声で私の言葉を遮る。




「遼どのの…遼のいない世界など…考えられぬ…」

『幸村…』

「そうじゃ!遼の居らぬ毎日は…つまらぬのじゃ!!」




みんなが、違った理由で私を必要としてくれている。
いろんな言葉をかけてくれる。




『はは…バカだなあ、みんな。今まで私がいない日々を送ってきてるのに…』



改めてみんなの優しさに触れて、涙が出そうになる。
私自身もみんなといることに慣れてしまって、その優しさに甘えてしまいそうになる。

―――でも




『帰るところが、あるでしょ?みんなを待っててくれてる人がいるでしょ?』




みんなの帰るところに、私の姿はないから。




『だから…さよなら、なんだよ』




言い終わる前に堪えきれなくなったそれが溢れてきた。




「…ったく、困ったHoneyだぜ」


伊達が拭いきれなくなったそれを、拭ってくれる。
その優しさは私の涙腺を更に壊す。




『うっ、ぐ…』

「どうせならよ、最後は遼の笑顔が見てえ」



優しく微笑みかけながら言う。



「私も遼は笑顔が一番似合うと思うぞ!!」
「私も笑って見送ってほしい」



兼続と長政さまが、




「遼の笑顔を見ていると、何だか安心しますし」


真田さんが、



みんなが暖かい声をかけてくれる。




『…変なの』


自然と涙はひいていた。
いつの間にか笑顔になっていた。
みんなの言葉が、そのひとつひとつが私の力になっていた。




『よし、今日はみんなで飲もう!!』

「お!良いじゃねえか!!」

「鬼の旦那、コップ持てないんじゃないの?」

「うるせえぞ!!」




そんなやりとりを眺めながら、みんなで宴の準備に取り掛かる。


こういうときこそ、一緒に明るく!
…だよね?




―――いつもより盛大に、芸を披露したり沢山美味しいものを食べたり…あっという間に時間は経っていった。


そして、いつの間にか私は眠っていたのであった。






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