「よし、着いたぞ!」

『はぁ…はぁ…っ』




私は息も絶え絶えなのに、長政さまは凄く爽やかな顔をしていて、なんというか…イラっとする。




「ほら、下ばかり向いていないで見ろ!」

『っ…何なんです―――』




ざぁっと音をたてて風が吹き抜けていく。私が顔を上げれば、そこは一面お花で埋めつくされていて。沢山の種類の色とりどりなお花が誇らしく咲いていた。





『すごい…!!』

「私が散歩をしていたら見つけたのだ」

『何か――この世のものじゃないみたいですね』




本当に凄い光景だった。こんなに沢山のお花はお花屋さんでも見たことがなかったし、売っている物より何倍も綺麗だった。



『…お市様、喜びそうですね』

「なっなな何故今ここで市の名前が出てくるのだ!!」


長政さまは顔を真っ赤にして慌てふためく。




『あっはは!だって長政さまが自分のためにこんな景色を見つけるはずがないですもん』



まぁ、1人でこの景色見てたら少し気持ちが悪いかも…というのが本音なんですけどね。




『お市様に見せたいんでしょ?』

「……だ」

『え?』

「そうだ、と言ったのだ!聞き返すな恥ずかしい…」



ちょ、長政さま顔真っ赤!どれくらい真っ赤かっていうとタコさんウィンナーぐらい真っ赤!(わかりにくい



『あ、じゃあ少しだけ摘んで持って帰りましょう?』




何が良いですかー?と聞くとすかさず「あれだ」と返ってくる。指を指している方向に目をやれば――




『あぁ、これですね』



真っ白な百合だった。長政さまがお市様にプレゼントしていたのと同じ物。




『…わかりやすい』

「むっ、何か言ったか?遼」

『あ、何でもないですーあははー気にしないで下さい』




口からポロっと出た言葉に即座に反応した長政さまが恐ろしかった。




『よっし…!!終わりましたよー長政さ…あれ?』



突然長政さまが私の視界から消えていた。少し辺りを見回すと、しゃがみこんで何かしている長政さまの姿をとらえた。





『何してるんですか?長政さま』

「ん?あぁ、ここだけ緑だったのだ。何かと思って見てみれば…こいつを仲間外れにして取り囲んでいるではないか」




こいつ?
何かと思ってずいっと差し出された手に握っていたものは、




『えっ―――ちょっ、長政さま凄い!!』

「はっ?何がだ」

『これ!四つ葉のクローバーって言って、この世界では見つけた人は良いことがあるんですよ!』




無意識に、というか知らず知らずにクローバーを見つけていた長政さまに感動を覚えた。





「そうだったのか…」

『仲間外れなんかじゃなくて、ここに生えているのは全部仲間なんです。成長過程で葉っぱが多いのに育つのもあるんですよ』




まぁ、武将が乱世の時代に四つ葉のクローバー探しなんてしてるはずがないから知らないのも当然かな?や、してたら面白いんだけど。




『これも持って帰って押し花にしましょう』

「押し、花?」

『帰ってから説明します!じゃあ戻りましょうか』



私がそう言って、家に帰る方向へ歩きだそうとすると、



「遼、少し待っていろ」

『へ?』



長政さまが私を引き留めて、待つように言う。

私は大人しく従って、その場に待機していると長政さまは、お花畑の中へ戻っていった。




『…何か落としたとか?』




訳もわからずとりあえず長政さまを見ていれば、何かを見つけたのかこちらへ戻って来た。




「………………」

『?』




私の目の前に立ってずい、と差し出された手の中には綺麗な一輪の花。




『…どうかしたんですか?これも持って帰りたいとか?』

「ちっ違う!!」




じゃあ何ですか?と聞くと長政さまはばつの悪そうな顔をしながら言う。




「遼に、似合いそうだと思ったのだ…」




最後になるにつれて声が小さくなっていって、聞き取りにくくはあったけど、確かにそう言った。





『え?私に?』

「っそうだと言っているのだ!!」




真っ赤になりながら叫ぶようにそう言う。ちょっと意外すぎたけど、お市様が好きになる理由も分かったような気がした。



「…良いと言うまで目を瞑っていろ」


私は大人しく従うことにした。別に長政さまだし変なことをするわけでもないだろう。


大人しく待っていると、長政さまの手が一瞬だけ私の頭に触れた。
「良いぞ」という許可と共に目を開けると、長政さまの手の中にあった一輪の花がなくなっていた。




『あれ、お花は?』

「さて…帰るぞ」



長政さまは答えてくれなかった。せっかくくれると言ってくれたのに、捨ててしまったのだろうか。


『あ、待って下さいよ!!』

「あぁそうだ」



私が小走りで駆け寄ると、長政さまは微笑んで「良く似合っている」と言った。何がなんだか訳のわからない私は家に着いてからその真相を知ることとなる。





(あれ、遼ちゃんそのお花可愛いね)
(え?)



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