「では行って来る」

『いってらっしゃい。寄り道とか面倒な事は絶対にしないで下さいね?はい、お金です』




いつか貰った某忍者マンガのカエルのお財布を持たせる。




「これは…?」

『お金です。お酒買う時にこれで買えるお酒を出して貰って下さい』




確かみんなにお金の単位とか詳しい事って一切説明してない気がする…。だからとりあえず乗り切れる方法で兼続にお酒を買ってきてもらうことにした。




「よし、わかった!」

『あ、落とさないで下さいね。大事なものなんで』

「心配するな、そのような不義はしないと誓おう」




一応約束をしてくれて、兼続は家を出ていく。私は無事に帰ってくることを祈るのだった。










―――――




「戻ったぞ」

『あ、お帰りなさい』





兼続が帰ってきた。両手は大量の袋で塞がっていた。


大量の、袋。






『…って、えぇ!?なっなな何でこんなに…えぇ!?』




私が持たせたお金と言ってもせいぜい諭吉さん一枚。一升瓶のを買ってくると思って、むしろ足りるかと心配になっていたほどだったのに…。





「…あぁ、重くは無いから安心しろ。遼に持たせるのは私の中で不義だからな!!」

『あ、本当ですかー!?良かった良かったー…ってちっがぁあああう!!ずれてるから!!そ う じ ゃ な く て !!!!どうしてそんなに沢山買ってきたんですか!?』





この人達来てからツッコミに磨きがかかったと思う。ノリツッコミを見事成功させ、兼続に問いただす。





「何故…あぁ、遼に言われた通りに買ったのだが、主人がさぁびすと言って貰ったのだ」




ご主人んんんんん!!!!!!
何やってるんですか!どうしてそんなに兼続が好きなんですか!天●人のとは別人ですよ!妻●木くんとは全く関係ありませんよ!!




『けっ結局不義ではないか…っ』




せっかく正しい買い物を身につけさせようと思ったのに台無しだ!!

…というか、何本だろう。1、2……げっ!!10本だ…と!?


ご主人、ごめんなさい。もしお店が潰れてしまったら私が責任を負います…


私が罪悪感MAXな中、兼続はひたすら私にサービスの意味を聞いてくるのだった。











んで、時は流れて夜。
月は雲に隠れてしまって見えないが、星が沢山煌めいている。


「静かなものだな…」と兼続は呟く。今日はみんなを恩返しなのだと言って説得し、私と兼続の2人だけで楽しむことになった。
…まぁお酒を呑むのは兼続だけなのだけれども。




「ここは越後と似ているな」

『え?』

「静かで穏やかな時が流れている…気候もそっくりだ!!」




兼続は懐かしむように話す。
確かにそうなのかも…?
まぁ静かなのは田舎っていうだけなんですけどね!!




「よし、お互いの事を知るために沢山語ろうではないか!」

『や、良いですけど』

「もしそれが嫌なら私が義と愛について語っても良いのだぞ?」

『あ、全力で遠慮しますねあははー』




あっぶねぇ…!!
兼続に義と愛語らせたら何日かかるかわからない!!絶対死んじゃう…!

私は義という単語が出た瞬間から身の危険を感じた。もう間髪入れずに即答出来た自分を褒めたい。




「では、私と共に朝まで語り合おうではないか!」

『…え?』

「恩返しは酌だぞ?酒が尽きるまで付き合ってもらうからな」





にこにこしながら、幸村とは違う綺麗な、純粋な笑顔を見せながら私の肩をがっつり掴んだ兼続には、反抗できませんでした。





(それで謙信様はだな――――)
(ギブですギブ。もう眠…ぐう)



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