(まじでかよぉおお!!)


内心、穏やかではなかった。

だって…っ!!
あの、あの佐助に様つけて敬語なんて…!!!!
何て屈辱的なんだ!



「あれ、おはよう遼ちゃん」


うっわ、

なんつータイミング…!!
絶対狙ったよね、どっかで見てたよね…!!!!



「え、俺様が何を狙ったって?」

『っだから、心を読む…っ!?』



いつもの調子で佐助に怒鳴ろうと思ったら、背後から何か感じてはいけないオーラを感じた。


うわ、汗噴き出てきた。

恐る恐る後ろを振り向けば――



「…遼さん?」

『ひぃいいぃっ!!』



どす黒い真田さんの顔に、何てめぇ俺の願い忘れてんだボケ…と書いてあった。




『すっすいませんでした!!』

「…くれぐれもお気をつけて」


真田さんは笑顔を崩さないまま、去っていった。




「え、遼ちゃんてば真田さんと何かあったの?」

『な、何もない…です』


私最大の笑顔を作って言う。



「…本当にー?」


佐助は怪しい…といったような表情を浮かべて私に聞いてくる。



『本当です!あ、佐助様、お米が炊けたようですよ』



では!!と言って私はその場から立ち去る。
何これ自分凄い恥ずかしい。


「…なんか変な物でも食べたのかな?」


佐助は本気で心配していたのだった。










私はとりあえず、起きてない人を起こしに行くことにした。



『伊達様ー』


一応ノックはしておく。

返事がないということは、起きてない或いはただの屍のようだの2択しかない。



『…伊達様、朝ですよ起きて下さい』


体を揺すってみるが起きる気配なし。


『…伊達様ぁああぁああ!!』


もうこの際しょうがない、布団を全部剥ぎ取る。


…起 き な い



『っだぁあぁああぁあ、ちくしょうめ!!伊達様なんて知らない!』


剥ぎ取った布団を丸めて、気持ちよさそうに寝ている伊達に思いっきり投げつける。



「っいってぇ!!!!!!!!な、何しやがんだ!」


クリーンヒットだぜひゃふ!!


伊達が飛び起きた。
げっほごっほとむせながら、私を睨み付ける。


すると、


「政宗様!?」



やべ、お父様登場だ。

騒ぎを、というか伊達の声を聞いて飛んできたのは小十郎さん。


「どうなされました…っておい、遼てめぇ政宗様に何か良からぬことでもしたんじゃねぇだろうな…?」



ひぃいいっ…!!
いっ一瞬で極殺モードに切り替わりましたけど!

体からいつもの如く雷を発する。



「Oh…Honey、良からぬことなら大歓迎だぜ?」


うっわ、最悪のパターンだ。
どっちにしろ捕まったら…死ぬ。


私は咄嗟に判断して、



『こ、小十郎様!!これには深ーい理由がありまして…!!』


「「………………」」



え、ちょ、何。
何で2人して黙り込んだの?

2人は信じられないといったような顔で私を凝視する。


…これって、今がチャンス!?


私は全く動かなくなった2人の隙をついて部屋から逃げた。



「…小十郎」

「はっ」

「お前…遼に何したんだ?」


…何もしておりませぬ、と答えてから2人はやっと動き始めた。
















『政宗さま、兼続さま、おはようございます』


私は一応旅館の女将風に、三つ指をついて政宗と兼続に挨拶をした。



「…何か変な物でも食べよったのか」

「遼、私は呼び捨てで気軽に!で良いのだぞ」

『いやあ、それがですね』



今朝の出来事を知らない2人に真田さんの恩返しで、願いを聞いたらこうなったと話した。

2人は、凄くぽかーんとした顔で私を見続けていた。


そりゃなるわ。

だって願い事おかしくね?…って思う。まだ伊達とかならまだしも真田さんって…



「…ま、まぁ幸村なら言いかねぬな」

『え、』

「あいつは時々裏の部分が見え隠れしているからな!!」



ちょ、嘘。
やっぱり幸村みたいに黒真田さんって有り得るの?や、同じ真田幸村だけど…そこまで一緒ってなると身がもたない。



『そうだったんですか…』

「今日1日だけなら遼もなんとかなるであろう、せいぜい頑張るのじゃな?」



政宗は凄く、いや本当に凄く人を馬鹿にしたような言い方で立ち去った。


…政宗の奴、絶対明日悪戯してやるよ!!



「無駄じゃな」

『心を読むな、馬鹿め!!…いや、心を読まないで下さい、馬鹿宗様』

「遼、今ここで決着でもつけるか…?」

「まぁまぁ、朝餉の時間に遅れるぞ2人共!」



悔しいながらも兼続が私達を宥めてくれて、みんなのいる居間に向かった。






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